国内

橋下知事の「大阪都構想」高給取りの役人にとって面白くない

11月27日投開票の大阪府知事選と大阪市長選のダブル選挙を目前にひかえて、橋下徹・前大阪府知事への異様なバッシングが燃えさかっている。

『週刊新潮』(10月27日発売号)が、「『同和」『暴力団』の渦に呑まれた独裁者『橋下知事』出生の秘密」と報じれば、同日発売の『週刊文春』も、「暴力団組員だった父はガス管をくわえて自殺 橋下徹42歳 書かれなかった『血脈』」と題して、いずれも2週にわたって同じ趣旨の記事を報じている。

橋下氏が既成勢力から包囲網を敷かれた発端は「大阪都」構想だ。府知事時代、大阪府庁と大阪市役所を解体し、東京都のように強い権限を持つ「大阪都庁」に再編する構想を打ち出した。また橋下氏は、辞任前に公務員改革の基本となる「職員基本条例案」と「大阪府教育基本条例案」を提出した。

職員基本条例案は、能力主義人事の導入や信賞必罰の人事評価を細かく定め、怠慢役人のリストラ基準を明文化した。

しかし、都構想にも役人規範にも、当の役人たちが真っ先に反発した。府と市が一体化されれば、大量の役人が不要になる。とりわけ大阪市役所は全国有数の“役人天国”として知られ、現業部門の給料が特に高い。交通局が運営する市バスの運転手の平均年収は民間の2倍近い800万円弱(2009年)。過去には都市環境局で下水道の維持管理などに従事する職員の3割が年収1000万円を超えていたことも批判を浴びた。

職員の不祥事にも大甘だ。仕事をしないで給料をもらう組合の「ヤミ専従」が横行しているうえ、2007年には学歴を詐称して採用されていた職員が400人以上発覚したが、停職1か月で免罪した。

彼らに橋下改革が面白いはずはない。

狼煙をあげたのは府庁職員だった。本誌は「職員基本条例案の内容について確認を要する点」(9月30日付)と題す、府の総務部が作成した反論文書を入手した。そこには、〈「年功序列的な人事制度」は事実誤認〉〈「特権的な身分階級」について具体的な事例が府にあればお示しいただきたい〉といったクレームから、〈「コンピュータ」は「電子計算機」とすべき〉〈「前条」は「前項」の誤り」〈「除く」は「除く。」とすべき〉といった細かい表記の問題まで、約700項目が列挙されている。文書そのものが、改革の必要性を証明していることは大いなる皮肉である。

教育基本条例案についても、府の教育委員5人が連名で、条例可決の場合は総辞職すると文書で表明した。

大阪市役所は現市長が橋下氏と選挙で戦うため、表立った批判は府の役人にまかせているが、職員の間には、「橋下市長になれば生活はこう変わる」とシミュレーションした文書がひそかに回覧されている。

市職労関係者が語る。

「文書は“橋下の職員基本条例に従えば職員の5%がリストラに遭う”“バスの運転手やゴミ収集などの現業部門職員は一般職に配置転換が認められないから残れない”という内容で、不安を募らせた職員の家族も親兄弟や親戚に“独裁者の橋下市長になればお父ちゃんが失業する”と触れ回っている」

職員の不安を煽って、本来は許されない公務員の組織的選挙活動を誘発する汚い戦略である。

※週刊ポスト2011年11月18日日号

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン