国内

朝ドラ『カーネーション』主題歌に違和感持たれる理由を解説

NHK朝ドラ「カーネーション」の、椎名林檎のボーカルが凝っている。ちょっとかすれたような高い声と裏声とを微妙に使い分け、大正から昭和にかけての時代のレトロ感が増幅される。だが、一方で、この主題歌に「そぐわない」「曲に違和感がある」といった声が出始めている。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察する。

* * *
椎名林檎の最新シングル、『カーネーション』。

「Musicランキング.com(ロック部門)」でも、首位を競い合う勢いです。それもそのはず、今ぐんと視聴率を伸ばしているNHK朝の連続ドラマ小説『カーネーション』の主題歌として、毎朝テレビから流れてくる旋律なのです。

ドラマの舞台設定は、大正~昭和の時代、大阪・岸和田の商店街。その時空間にピタリあわせるように、主題歌もレトロ風の不思議な曲調です。バイオリンなどのストリングス、ハープの優雅な音をバックに、たゆたうような、ゆったりとしたワルツ調。

椎名林檎のボーカルが、凝っています。ちょっとかすれたような高い声と裏声とを微妙に使い分け、息づかいを際立たせ、ポツポツと語りかけるように歌う。それによって不思議なレトロ感がより一層、増幅されていきます。

この曲の雰囲気がドラマ空間にぴったりはまっていて、私には心地が良かったのですが、実は、このドラマのために書き下ろされた作品だと知り、なるほど、と納得。

ところが。新聞の投書欄やテレビ批評には、「ドラマの内容はいいのに椎名林檎の主題歌がそぐわない」「曲に違和感がある」といった声が、明確な根拠の示されないまま、いくつも掲載されています。

いったいなぜ、そうした批判が出るのか? その「違和感」は、どこから来ているのか? 興味をそそられました。推察してみるに、椎名林檎の「歌い方」に、是非が分かれる理由が潜んでいるのではないでしょうか。

ボーカルは意図的に声を高くかすれさせたり、言葉の音と音の間を切って、息づかいを残し、独特の不安感やざらつきを出している。それが、「わかりにくい」「そぐわない」「しっくりこない」という批判のもとになっているのでは。

はっきり言って、NHK連続テレビ小説の主題歌に、「あいまいさ」「不安感」を多くの人は求めていないのでしょう。もっとシンプルな「家族の感動物語」をそのまま歌いあげてほしい。そう願っている、正当派の欲求なのでしょう。

家族の物語に、不安感や神秘はいらない。そういう視聴者も多い。しかし一方で、不思議な主題歌が、より一層ファンタジー感覚を際立たせ、物語世界を膨らます効果を発揮してもいるのです。

お定まりの「理想の家族」像や現実世界とはちょっと離れた、「お芝居的空想空間」を、この歌の神秘性が力強く下支えしている、とも言えるのです。

みなさんはいかかでしょう? 私は後者の、「不思議感覚」に一票入れたいと思いますが。

あわせて読みたい

関連キーワード

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン