ライフ

パチンコ店経営していた孫正義氏の父 釣り堀併設し大ヒット

1月12日に発売される『あんぽん 孫正義伝』(小学館刊)。著者の佐野眞一氏は、同書のなかで、孫正義氏の父・孫三憲氏の商才について、こう書いている。(文中敬称略)

* * *
三憲は金貸し商売をやりながら、「これは長くやる商売ではない」というのが、いつもの口癖だった。「カネはあくまで商品。カネ貸しだからといって、下品にふるまってはいけない」というのも、三憲の口癖だった。

孫が十歳になった頃、三憲は金貸しからパチンコ屋に転身した。

三憲の金貸し時代のカバン持ちだった大竹仁鉄は、孫一族がパチンコ屋に相次いで転身した経緯について、こんな興味深いエピソードを教えてくれた。

「三憲さんのところは七人兄妹ですが、長男の三憲さんがリーダーシップをとっていました。でも、ほかの兄妹も焼酎の密造と養豚で結構なお金を貯めていて、いろいろな商売に手を出していた。

母の兄妹は、みんな個性が強いし、我も強かった。最初にパチンコ屋を始めたのは、うちの母(清子)と三憲さんの弟の在憲さんなんです。一九六九年くらいでした。それが結構繁盛したものだから、それから一年ほどしたら、今度、長女の(玉村)友子さんと三憲さんがパチンコ屋を出すことになった。それが、なんとうちの母たちが出していた店の隣ですよ(笑)。

隣が金儲けすると、日本人は足を引っぱるが、韓国人は歯がゆがる、という言葉があります。うちの一族はまさにそんな感じでしたね。結局、兄妹同士で隣に店を出してもしょうがないから、店をつなげて四人で共同経営しようということになった。ところが、月末になると必ず大ゲンカです。売り上げをどう配分するかで。

誰が一番よく働いたか、どんな景品を仕入れたとか、この仕事はうちがやったとか……。そこにばあさん(李元照)まで入ってくると、もうまったく収拾がつかなくなる(笑)」

一九八〇年代の初め、大当たりが出るフィーバー機の規制がまだ始まる前のパチンコブームのときには、孫一族七人兄妹のうち六人が持っていた佐賀と福岡のパチンコ屋だけで、五十六軒もあった。その当時、パチンコで大儲けした孫一族の一人が建てた御殿のような豪邸は、いまでも一族の語り草になっている。

その家には、だだっぴろい風呂場に水風呂やテレビ付きのサウナまであって、飼っていたピレネー犬の犬小屋にはクーラーまでついていた。

かといって、大竹が言ったように、そんなリッチな生活を彼らにもたらした一大パチンコ企業は、孫一族が一致団結して築いたわけではない。

こうした孫一族の奇妙な関係を冷静にウオッチしていた銀行の支店長は、「みなさんで一致団結すれば、すぐにでも日本一のパチンコチェーンになれるでしょうに」と、残念がったという。

『孫家の遺伝子』(孫泰蔵著)によれば、フィーバー機の規制が始まって孫一族のパチンコ屋に閑古鳥が鳴き始めたとき、三憲はこんな奇抜なアイディアを出してみんなを驚かせたという。

三憲はパチンコ屋の駐車場に釣り堀をつくり、「赤鯉を釣った人には一万円のボーナスを差し上げます」というチラシをまいた。すると釣り堀は大繁盛し、ボーナスをゲットした客はパチンコ屋に戻ってきた。パチンコで負けた客はまた釣り堀で儲けようとするから、両方とも繁盛した。

要するに三憲は、大量の黒鯉に数匹だけ混ぜて釣り堀に放流した「赤鯉」を、規制されたフィーバー機がわりにしたのである。

三憲が北九州の八幡に家を建てたとき、三憲はその豪邸で新築祝いの大盤振る舞いをし、両親を呼び寄せた。

(『あんぽん 孫正義伝』より抜粋)

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト