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都内下請け業者「韓国企業はきつい要求しない。対応も対等」

モノづくりの現場で世界を大きくリードしてきた日本の製造業だが、近年急速な衰えが指摘されている。製造業の現場で今、何が起きているのか? 経済ジャーナリストの山下知志氏が、全国屈指の中小企業集積地、東京都大田区の状況をリポートする。

* * *
区内の多摩川堤防沿いを歩くと、一戸建て住宅やマンション、アパートに交じって町工場が点在する。シャッターが閉まったままの工場も目につく。区内の中小企業の倒産件数は、ここ数年は、年間100件前後ペースで、企業数は確実に減っている。1983年末に約9000社あった区内の工場数は、いまや4000社と半減。従業員数も、約9万人から3万人台へと3分の1にまで減少している。

大田区では、区内企業の国際化支援事業を行なっている。その一つが海外進出支援だ。タイの工業団地内に「オオタテクノパーク」という工場アパートをつくり、進出を支援している。まるで区内の産業空洞化を促進させるような支援事業だが、町工場も海外に進出しなければ生き残ることができない。海外に出た企業数は約140社で、20社近くが進出を検討中だ。

大企業と中小企業の関係も様変わりしている。大手の取引先から無理難題を押しつけられて苦しむ下請け企業の顔の下に、今後を見据えてしたたかに動く別の顔がある。韓国企業と取引している都内の部品会社役員は、こんなことを言った。

「彼らは、値引きなど価格面できつい要求をしてくることはありません。ときには取引単価を上げてくれることすらある。ビジネス・パートナーとして、対等に対応してくれます」

独自技術を持つ中小企業は、高付加価値製品の生産を増やす韓国、台湾、中国系企業との連携に活路を見いだし、取引を拡大している。

※週刊ポスト2012年1月27日号

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