国際情報

ロシア大統領府・政府巡る噂の多くは同性愛の件だったの証言

有名人の噂話が好きなのは万国共通だが、ロシア人は少し趣が違うのだという。対ロシア外交を鋭く分析する新刊『国家の「罪と罰」』(小学館)の著者である元外交官で作家の佐藤優氏が解説する。

* * *
ロシア人は国家元首に対して、独特の感情を抱いている。ロシア人の間では、プーチンのことを「あいつは死神みたいだ」とか「卑猥な言葉(マート)を平気で口にするので下品だ」と平気で悪口を言う。

しかし、外国人が調子を合わせて、プーチンの悪口に加わろうものなら、いままで悪口を言っていた当のロシア人が「貴様は、わが大統領に対して何を言うんだ」と青筋を立てて怒る。家族の中では「おとうちゃんはだらしない」とか「粗大ゴミ」だと悪口を言っているが、他人が「あんたのお父さんはいやらしい人間だね」と言われると、誰もが不愉快になるのと同じような感情だ。

ときたま、プーチンの批判をしてもロシア人から怒られない外国人がいる。こういう外国人は、ロシアのほんとうの友人と認識されているので、「こいつは悪口を言っているのではなく、ロシアのことを心配して好意的に苦言を呈しているのだ」と受け止められる。

ロシア人は噂話が大好きだ。ゴルバチョフやエリツィンの夫婦生活や家族問題、セックス・スキャンダルに関する噂話はクレムリン(大統領府)高官の大好きな話題だった。ちなみに筆者が現役外交官としてモスクワで勤務していた頃は、エリツィンや大統領府・政府を巡る噂話のほとんどは同性愛、つまり、男と男の恋愛感情が政治に悪影響を与えているといった類の話ばかりだった。ソ連崩壊という大きな革命の直後で、それだけ政治エリートの人間関係が濃密だったのだろう。

それでも、一つの越えてはいけない線があった。それは、このような噂話が活字になって新聞や雑誌で流布することである。それは、権力のみでなく権威をあわせもつ大統領に対して「不敬」であるという感情を呼び起こすからだ。

マスメディアは、政府による弾圧よりも世論の反発を恐れて、大統領のプライバシーに関する報道を差し控えるのだ。ロシアで深刻なのは、公権力による検閲ではなく(ソ連時代のような事前検閲は現下ロシアで完全に撤廃されている)、当局や世論の反応に過敏になったマスメディア関係者が行なう自己検閲や自発的撤退である。

※『国家の「罪と罰」』より抜粋

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン