国内

大阪市交通局長に不採算事業バッサリの「リストラの鬼」就任

 大阪市の橋下徹市長は就任以来、「役人天国」と呼ばれた大阪市の改革を声高に訴え、職務命令に従わない職員の排除、優遇されすぎている公務員給与の見直しなどを打ち出してきた。
 
 2年連続で最低評価を受けた職員などを分限免職の対象とする「職員基本条例案」の法制化を衆院選に向けた公約「維新八策」に盛り込み、大阪のみならず中央政府にも公務員改革要求を突きつけた。
 
 その姿勢を目の当たりにして、「駆け込み退職者」が急増している。3月末の早期退職希望者は、昨年比2倍の650人に上る。

 今月7日には、大阪市は職員給与の平均7.2%カットで、労使交渉が妥結した。市の7労組を束ねる大阪市労働組合連合会(市労連)は、「不満はあるが、これ以上の譲歩は難しい」と苦渋の決断を強調し、橋下氏に白旗を揚げた。

 攻勢の手は緩めない。妥結後の会見で、橋下氏はある部局の名前を挙げた。

「交通局や環境局の現業職員、約1万2000人の給与も民間並みに見直す」

 橋下氏が公務員改革の“最大の標的”に定めているのが、市営地下鉄や市バスなどを運営する市交通局だ。前述した早期退職希望者650人のうち、交通局の希望者は217人と他部局に比べて突出して多い。

 宣言通り、9日に橋下市長は交通局改革に本格的に乗り出した。市交通局のトップとなる交通局長に、京福電鉄(京都市)の藤本昌信・副社長を招聘することを発表し、「民間経営の手法を徹底してほしい」と、将来の民営化を明言した。

 藤本氏は関西の電鉄業界では「リストラの鬼」として知られる。

 在阪の経済誌記者がこう解説する。

「京都大学卒業後、京阪電鉄から子会社の京福電鉄に出向。2009年に副社長に就任して経営改革に大ナタを振るい、約30年ぶりに株式の復配を達成した。赤字のバス路線など、不採算事業はバッサリ切る。常務時代には赤字路線を全線同一料金にするという実質的な値上げを実現し、危機を乗り切った」

 柔道5段の猛者にして、即断即決の経営判断の持ち主。橋下氏の交通局改革のキーマンであることが想像できるが、最大の抜擢理由は別にあるという。

 藤本氏は京福電鉄で人事・労務畑を歩んできた労務管理のエキスパート。人事部長や管理本部長などを歴任し、10数年にわたり労働組合との折衝にあたった。橋下氏も会見でこう述べている。

「藤本さんは、組合との関係や労務管理に長けていると聞いている。橋下のようなやり方ではなく、真摯なやり方で管理をする方だとの評判だ」

 実際、京福電鉄労組からの評価は意外なほど高い。

「我が社が経営危機から脱却できたのは、賃金カットやクビ斬り一辺倒ではなく、業績を伸ばして切り抜けるという藤本さんの経営方針が大きい。もちろん、無駄な人件費には厳しく対応されたが、こちらの話に聞く耳を持たない人ではなかった。我々としても失うのは惜しい人です」(同電鉄労組幹部)

※週刊ポスト2012年3月2日号

関連キーワード

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン