ライフ

思春期に問題行動の子供 ダンスが脳機能向上に効果と専門家

 4月から、全国の公立中学校の体育の授業に新しく「ダンス」が必修科目に組み込まれている。そこで、バラエティー番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が「ダンス」の脳科学的効果について説明する。以下は澤口氏の解説だ。

 * * *
 脳機能の一部の向上や低下防止からいうと、「エアロビクス(有酸素運動)」、脳で動きなどを考えながらやる運動学習としての「エクササイズ」、そして「音楽」という3つの要素がはいっている「ヒップホップ系のダンス」がお勧めです。

 身体的な側面でいうと、幼児期からエアロビクス(ジョギングなど有酸素運動であればなんでも)を経験して育った人は、しなかった人に比べ、成人してからの肥満傾向が低く、またそれに関係する疾病リスクも低くなります。脳機能においては、幼児期からのエアロビクス経験者のほうが、前述した地頭の能力が高くなることがわかっています。

 そして、エアロビクス以上に脳にいいのがエクササイズです。ここでいうエクササイズにはエアロビクスの要素に加え、反復したり記憶して動くという運動の練習、つまり「運動学習」という別の要素がはいります。

 運動学習に深くかかわる脳領域は、成人でも知的能力や自己制御力、社会コミュニケーション力を担う脳領域と関係します。この関係は、幼少期に最も強く、思春期でもまだ強めなので、「ダンス」は脳科学的な根拠に基づき肯定できると前述したのです。

 次に3つ目の要素の音楽。脳科学と音楽を結びつけると、ピアノ演奏が地頭向上に非常に効果的ですが、「音楽に合わせて踊る」というダンスにも楽器演奏と似た要素があるのです。また、がん患者のメンタルケアやうつ病などの精神疾患に使用されている「ダンス療法」という治療法もあります。

 メンタルケアに効果があるくらいですから、成長期の子供に「ダンス療法」が悪いわけがありません。

 最近では、思春期に問題行動を起こしたり、うつ病になってしまった子供たちに、実際に「音楽療法」が試みられています。その療法は、リラックスできる楽曲を聴くことを中心に行う従来の音楽療法と多少異なるもので、「エクサゲーミング療法」と呼ばれています。簡単にいえば、テレビゲーム感覚で楽しみながら、ダンスを踊る方法です。この療法を普通の子供の脳機能向上に使用しても、もちろん効果があります。

 そのポイントは、他人のダンスを見て、真似て学習することにあります。ですからAKB48や少女時代、EXILEの動画を見ながらダンスを学習する(エクササイズする)という方法で充分です。これによって自己制御力や社会コミュニケーション力を向上させることができ、さほど深刻ではない引っ込み思案や衝動的攻撃性の改善にも効果があるのです。ちなみに、ヒップホップ系のダンスは、思春期の脳だけでなく、高齢者を含めた成人の脳にもプラスになります。

※女性セブン2012年5月10・17日号

関連記事

トピックス

清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
引退すると言っていたのに誰も真面目にとりあっていなかった(写真提供/イメージマート)
数十年続けたヤクザが引退宣言 知人は「おめでとうございます」家族からは「大丈夫なのか」「それでどうやって生きていくんだ」
NEWSポストセブン
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト