ライフ

ボケた親 都会暮らし嫌と同居拒まれた子にどんな義務あるか

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「気になる母のボケ。息子としてどう向き合えばよいでしょう」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 父が亡くなった後、田舎で一人暮らしをしている母のボケがひどいと、近所の方から連絡を受けました。そこで一緒に暮らそうといったのですが、母は都会暮らしは嫌だといいます。しかし、母を放っておくのも心配です。何かあった場合、息子として問われる義務や責任について、アドバイスをください。

【回答】
(1)お母さんの生活が困難になる場合、(2)財産上のトラブル、(3)第三者に損害を与えた場合、を検討します。(1)では、扶養義務が問題になります。親子・兄弟の間では互いに扶養の義務があり、夫婦も同様です。しかし親に対する子の扶養義務は、夫婦間や未成熟児に対する親の関係のように、自分の生活と同程度の生活を保障する「生活保持義務」ではなく、自らの社会的身分に相応しい生活をして、余力がある限りで負う生活扶助義務に止まるとされています。

(2)は、騙されて損害を被った場合などです。お母さんが生活に困るようになれば(1)につながり、将来の相続にも関わるので、間接的にあなたに被害が生じますが、格別の義務や責任はありません。損するだけです。

(3)は、認知症が進んで近所に迷惑をかけた場合です。不法行為になれば、お母さんに賠償責任があります。もし、認知症で物事の判断ができない場合だと、責任無能力として賠償責任を負いません。

 成年後見人がいれば、法定監督義務者として責任を負いますが、いない場合、事実上監督していた扶養義務者が、不法行為を予見できるのに放置した結果、起きたと考えられ、監督義務者に準じる者として、民法第714条の損害賠償責任を負うこともあり得ます。但し、扶養義務者でも地方に住んでいて監督できなければ、該当しないと思います。結局、どの場合でも、あなたに責任が生じることは原則的にないでしょう。

 ですが、(3)があれば近所に迷惑ですし、(2)はあなた自身も損をします。(1)の通り扶養義務もありますから、成年後見制度を利用し、家庭裁判所で保佐人や後見人を現地で選任してもらい、お母さんの生活をサポートできるように検討しては如何ですか。地区の民生委員と相談することをお勧めします。

※週刊ポスト2012年7月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト