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「動脈硬化など血管系疾患リスクに『EPA』有効」と専門医

■増加するメタボや糖尿病対策にもEPAが光明に

 2000年に行なわれた調査では、10年前と比較して、30〜50歳代の中性脂肪値上昇とともに、糖尿病患者数に著しい増加が見られた。メタボリックシンドロームの患者も増加していることから、平井博士は、「2010年から20年にかけて、心血管系疾患が爆発的に増える可能性がある」と、警鐘を鳴らす。

 また20年前に比べ、患者数が約3倍にもふくれあがっている糖尿病も、脳梗塞や心筋梗塞の大きなリスク要因となる。糖尿病になると、動脈硬化が進み、これらの発症率が3倍にもなるからだ。

 動脈硬化の要因となるコレステロールについては、現在、その値を約3割低減できる医薬品が医療現場では使用されている。しかし、平井博士は、「医薬品のみでは、心血管系疾患への対処には限界がある」と話す。そこで注目されているのが、コレステロール低下薬とEPAの併用による血管系疾患の治療だ。

「EPAには、血中の中性脂肪を減らすだけでなく、血が固まるのを防ぎ、血管そのものを柔らかく保って、血管の病気を抑える作用があります。これを利用するのです」(平井博士)

 研究では、脂質異常症の患者を約9300人ずつの2グループに分け、一方には血中コレステロール値を下げて、動脈硬化を予防する医薬品のみ、もう一方には同じ医薬品と1日1.8gのEPAを投与。その結果、EPAを併用したグループでは、コレステロールだけでなく、中性脂肪も明らかに減少し、(心臓の)冠動脈へのトラブル発症率が5年間で約3割も低くなった。

「中性脂肪が多く、善玉コレステロースの少ない人の場合、EPAを併用することで、冠動脈疾患の発症率が53%も低減しました。EPAを利用することで、医薬品の限界を打ち破ることができるのです」(平井博士)

 メタボリックシンドロームや、その予備群にも、EPAは有効だ。平井博士によると、中性脂肪の増加を防ぐには、「1日2g以上のEPAをとることが有効」という。例えばイワシなら、可食部100g中のEPAは多くて1.4g、マグロのトロなら1.3g、白身魚のカレイなら0.2gのEPAが含まれている。この量を毎日継続して摂取するのが難しければ、EPA配合のサプリメントやドリンクなどを活用するのも、ひとつの手だろう。

 生活習慣病は、痛みなどの前兆もなく発症することが多い。メタボやメタボ予備群だけでなく、現在は健康という人も、ひとたび生活習慣病を発症してしまえば、生涯続く病気のリスクや不安、節制した生活からは逃れられなくなる。そうなってからでは遅いのだ。「毎日、魚とEPA」で、心血管系疾患の不安だけでも解消しておくのが、この先をラクに生きる術のひとつかもしれない。

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