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マンション駐輪場を有料駐輪場化 住民の4分の3の同意必要

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「マンションの敷地内を有料駐輪場に。どんな問題が想定されるか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 私の住むマンションは駅に近いため、周辺地区から通勤する自転車利用者が自転車を停めておくのに都合のよい場所として利用されています。マンションの住民専用駐輪場に無断で自転車を置いていく人が多いのです。そこで有料化にする案が出ていますが、その場合には、どのような問題があるでしょうか。

【回答】
 管理組合の問題と経営上の問題、税金の問題があります。マンション区分所有者は、法律上当然に敷地や建物の管理のための団体を構成しますが、通常は管理組合がそれに相当します。マンションの駐輪場は住民全体で共有する共用部分ですから、有料駐輪場は管理組合が経営することになります。

 管理目的の団体が有料駐輪場の経営ができるかまず問題ですが、料金を修繕のために使うなど、管理に資するのであれば問題ないと思います。しかし住民専用の駐輪場を一般向け有料施設に変えるのは、共用部分の効用の著しい変更になり、区分所有者の頭数と床面積の比率で決まる議決権のいずれも4分の3以上の賛同が必要です。

 この特別多数決で、有料駐輪場への変更を決議すれば、事業は可能です。しかし実際に運営するためには、利用条件を整備し、一般利用者と駐輪契約を締結した上、料金の集金と金銭管理が必要です。会計がずさんだと金銭問題が起きます。また駐輪料の額に相応の設備や、その管理も求められます。

 管理に手抜かりがあって事故があると、責任追及を受けることも考えられるので、保険も検討しなくてはなりません。一つの事業を立ち上げるのですから、気を配るべきことはたくさんあります。近所の駐輪場の経営実態を調査して、参考にすることもよいと思います。

 最後に税金の問題です。管理組合は法人でなくても、通常は法人税法が定める34種類ある収益事業のいずれかを営むことになり、収益があれば法人税が課税されます。一般向けの有料駐輪場の経営は、不動産貸付業、または形態によっては倉庫業として収益事業になる可能性があります。早めに税務署に相談してください。駐輪場経営は可能ですが、トラブルを避けるためには慎重を期して、十分に準備することが必要です。

※週刊ポスト2012年10月12日号

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