スポーツ

プロ野球の審判員 試合後のメシに三塁塁審が誘われない理由

 プロ野球では選手がもちろん主役だが、なくてはならない存在が審判だ。彼らなくして試合は成立しない。審判には隠れざる苦労がある。

 ひとつ例をあげると、審判はかなりの重装備である。ユニフォームの中にレガースとプロテクター、安全靴仕様のシューズ……。球審のフル装備は合計5kgにも及ぶ。この格好で試合終了まで立ちっぱなしだ。選手はベンチに座れるが、審判は座るわけにはいかない。そのうえ意外と走る機会が多く、見た目以上に体力を使う。

「一度、球場で審判の動きを見てみてください。自分の担当だけ見ていればいいわけではなく、打球の一番近くの審判が判定のために追いかけ、それに応じて他の審判も動いています。実は、審判ほど試合中に動き回るポジションはありません」(元セ・リーグ審判・篠宮愼一氏)

 そのため、日頃の鍛錬は欠かせない。審判の1日(ナイターの場合)は、午前10時頃に起床して散歩やジョギング、あるいはスポーツジムで軽く鍛えることから始まる。肩や腰に疲労がたまっている場合は、整体治療に出かける者もいる。

 試合開始2~3時間前までに球場入り。試合前の練習時に、「目慣らし」のためバッティングケージの後ろに入ることもある。その後シャワーを浴びて軽食。このとき、水分の摂りすぎは要注意。試合中はトイレに行けないのだ。

 試合をこなした後もすぐには帰れない。出場審判で行なう反省会があり、微妙な判定についてはビデオを使って議論になることもある。退場など大きなトラブルがあった場合は、報告書を作成しなければならない。そのためどんなに早くても、帰宅できるのは深夜11時から真夜中過ぎ。床に就くのは明け方近くになる。

 一軍レギュラーであればこれを4カードほど(約12試合)務め、次の1カード(3日間)が休みになるのが基本。現在は5人審判制が取られているため、担当は原則として一塁→二塁→三塁→球審→控え審判のローテーションとなる。元パ・リーグ審判員の新屋晃氏が語る。

「監督の抗議が多いのは得点に絡む三塁でのクロスプレー。そして一番プレッシャーがかかるのは球審ですね。球審をやれば1試合で3~4kgは痩せました」

 そのため「暗黙の了解」もある。前出・篠宮氏の話。

「試合後に審判同士でメシを食ったりもしますが、三塁塁審は誘わない。翌日が球審だし、ナーバスになっていることが多いんです」

 このためか、審判には特に胃の不調を訴える人が多いという。篠宮氏も何度となく胃痙攣に悩まされた。また、不幸にも夭逝する人も後を絶たない。『プロ野球審判ジャッジの舞台裏』(北海道新聞社刊)著者で、元パ・リーグ審判員・山崎夏生氏も、29年の審判生活の間に3人の同僚の死に遭遇した。胃がん、脳梗塞、心筋梗塞……いずれも40代の若さだったというから、ストレスの大きさが窺われる。

※週刊ポスト2012年11月2日号

関連記事

トピックス

違法賭博胴元・ボウヤーが激白した「水原と大谷、本当の関係」
《大谷から26億円送金》「ヘイ、イッペイ。翔平が前を歩いてるぜ」“違法賭博の胴元”ボウヤーが明かした「脅しの真相」、水原から伝えられていた“相棒の素顔”
NEWSポストセブン
2022年にHKT48を卒業した松本日向
【ボートレース全国24場を踏破】元HKT48・松本日向が語る「趣味→仕事」の楽しさ「負けすぎて『ギャラないじゃん!』ってことも」
NEWSポストセブン
大谷の口座から26億円を受け取った胴元・ボウヤーが独占取材に応じた(Aflo)
《独占スクープ》大谷翔平の26億円を騙し取った“違法賭博の胴元”が告白!「水原一平、エンゼルスとの本当の関係」【蜜月ポーカー写真の存在】
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
《父・水谷豊は1人娘の背中をそっと押して》女優・趣里と三山凌輝、結婚発表の直前まで続いていた母・伊藤蘭との「家族会議」
NEWSポストセブン
比例でトップ当選を果たした石井章氏に浮上した“税金還流疑惑”(写真/共同通信社)
秘書給与不正受給疑惑の石井章・参院議員 2022年には“ファミリー企業”や“幽霊会社”への税金還流疑惑も
NEWSポストセブン
今年もMVPの最有力候補とされる大谷翔平(写真/Getty Images) 
《混迷深まるハワイ別荘訴訟》「大谷翔平は購入していない」疑惑浮上でセレブ購入者の悲痛、“大谷ブランド”を利用したビジネスに見え隠れする辣腕代理人の影
女性セブン
志穂美悦子との別居が報じられた長渕剛
《長渕剛・志穂美悦子についに別居報道》過去の熱愛スキャンダルの時も最後に帰った7億円豪邸“キャプテン・オブ・ザ・シップ御殿”…かつては冨永愛が訪問も
NEWSポストセブン
学校は誠実な姿を生徒たちに見せることができるだろうか(HPより)
《ゴルフの名門・沖学園高等学校で複数の暴力事案が発覚》激怒した寮長の投げた金属製コップが生徒の目元に直撃…流血で数針縫うケガ
NEWSポストセブン
死因は上半身などを複数回刺されたことによる失血死だった(時事通信フォト)
《神戸女性刺殺》谷本将志容疑者が被っていた「実直で優秀」という“仮面” 元勤務先社長は「現場をまとめるリーダーになってほしかったくらい」と証言
週刊ポスト
「部員は家族」と語ってきた中井哲之監督だが…(時事通信フォト)
“謝罪なし対応”の広陵高校野球部、推薦で入学予定だった有力選手たちが進路変更で大流出の危機 保護者は「力のある同級生が広陵への進学をやめると聞き、うちも…」
週刊ポスト
還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
NEWSポストセブン