国内

【尼崎事件・角田美代子の人生】17歳時と20歳頃の2度の結婚

 兵庫、香川、滋賀で平穏に暮らしていた4家族を離散させ、死者・行方不明者は10人を超えるという犯罪史上最大級の尼崎連続怪死事件は、主犯格の獄中死という最悪の結末を迎えた。事件発覚から3か月――。気鋭のノンフィクション作家・石井光太氏が角田美代子の人生を追った。

 美代子は中学時代、月岡という姓を名乗っていた。中学の同級生によれば、月岡はお世辞にも美人とは言えず、ゴリラみたいな顔で、陰で『ゴリっぱち』と呼んでたぐらいで、男は誰も相手にしたがらず、女の友達もまったくいなかったという。(文中敬称略)

 * * *
 中学卒業後、美代子は高校一年の一学期で中退し、ほどなく結婚する(17歳時)。中学時代は「ゴリっぱち」と蔑まれた少女も、いつしか女としての幸せを欲するようになったのだ。ある同級生はこんな光景を憶えている。

「高校二年の大晦日やったかな、町を歩いとったら、ばったり月岡に会うたんや。今何しとんねんと訊いたら、『ウチ結婚したんや。遊びに来い』と言われてアパートに連れて行かれ、見事なお節料理を見せられた。月岡は『うちがつくったんや』と自慢しとったけど、嘘だとわかった。どっかで買うてきたんやろ。でも、月岡がチャンチャンコを着て女っぽく振る舞っているのを見て、こいつも落ち着いたんかな、と思った」

 相手は同級生の兄だった。これほど早く結婚したのは、家庭への飢えがあったからだと思う。だが、結婚生活は長くはつづかなかった。わずか一年も経たずに離婚に至ったのだ。

 再び彼女は独り身となり、今度は尼崎南部の中心地のひとつ出屋敷駅周辺に出没するようになった。このあたりは売春宿や連れ込み宿があり、夜になると酒臭い労働者たちであふれ返った。美代子は川辺にある連れ込み宿を借りて手下の女三人を雇い、行き交う男たちに声をかけては売春を斡旋していた。前出の同級生はたまたま川の近くで美代子に声をかけられ、「安うしとくで」と言われたらしい。

 もし彼女が容姿に自信があり、男にこびる術を知っていたら自ら体を売っていたかもしれない。だが、彼女は十代半ばで自分に女としての魅力がないことを認め、他人の体で春を売る道を選んだ。

 幼い頃から母のしていた夜の商売や父の遊郭での放蕩を見てきた影響もあった。十九歳の時、彼女は十六歳の少女に対する売春強要で逮捕されている。

 美代子は二十歳を越えて、気の弱い同級生と二度目の結婚をしたが、これもまた長続きしなかった。連日のように仲間を家に引き込んでは深夜まで騒ぎつづけていたため、出ていかれてしまったのだ。

 この二度目の離婚は、彼女の胸に一生残る傷を与えたようだ。彼女はその後一度も正式な結婚をせず、幼馴染との関係も絶ち、地下の世界に潜り込んでしまうのである。

※週刊ポスト2013年1月25日号

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン