竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「オプショナルツアーで食中毒に。地元の主催会社を訴えたい」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
フィリピンのセブ島に遊びに行ったとき『素潜りウニ食べ放題』というツアーに参加しましたが、その時期のウニには毒性があり、私は食中毒に。事前に「すべては自己責任」と記された書類にサインはしましたが、現地語で書かれていて騙されたようなもの。地元の主催会社に責任を取らすにはどうすればよいですか。
【回答】
地元の主催会社への責任追及の可否は、フィリピンの法制度によって決まるので、適切な助言をする自信はありません。仮に日本会社の現地支店が主催したと仮定すれば、日本人同士ですから日本法が適用されます。
そこでまずは現地のツアーの主催者の責任ですが、参加者との間で、捕えたウニを食べてもらうというイベントを提供する債務がありますが、この債務の性質上、安全なウニを提供することもその義務として当然に含まれるはずですから、主催会社の責任は否定できないと思います。読めない書類にサインさせても読めないことがわかっていたはずで、有効な免責とはいえないでしょう。
次に日本の旅行業者の企画したツアーのオプショナルツアーであったとすれば、元々の日本の旅行会社の責任を問えないかが問題になります。旅行業者が企画する旅行は、旅客運送、宿泊、その他の旅行先のサービスなど様々なサービスを手配することで実現されます。
企画旅行の旅行業者は、旅行者に対し、契約に従って各種の旅行サービスを旅行者が受けられるよう手配する手配債務と手配どおり履行されるよう管理する債務を負いますが、これを超えてオプショナルツアーの主催者の行為に直接責任を負うことはありません。
しかし、旅行者の安全を配慮する信義則上の義務があると解され、サービス提供業者の選定に際し、旅行者の安全確保の見地から明らかに危険であることが認識できた現地業者を選定していれば、安全配慮義務に違反したことになります。
なので当該現地業者の評判や過去の事故例などを調べ、変な業者を選んでいれば、日本の旅行会社の責任を追及することも可能です。また責任の有無に拘らず旅行中の傷病を補償する特別補償が約款で規定されていると思いますから、旅行会社に相談してください。
※週刊ポスト2013年4月12日号