ビジネス

マスオさん 30代の正社員で係長だからスピード出世といえる

 アニメ「サザエさん」は昭和46年に第1回放送が行われた長寿番組である。ほのぼのとしたサザエさん一家のユーモアに癒される人も多いが、作家で人材コンサルタントの常見陽平氏は「サザエさんを見るとブルーになる」という。そこには平成の世にはあり得ない光景が展開しているからだ。

 * * *
 皆さんは、「サザエさん症候群」という言葉をご存知ですよね?日曜の夕方になり、『サザエさん』を見ると、「明日、会社行きたくないなぁ」とブルーになるわけです。今回は、この「サザエさん症候群」について考えてみることにしましょう。

 最初に言っておくと、私、幼い頃から『サザエさん』が苦手でした。なんでこう、毎回、展開が見え見えなのだろう、ギャグが面白くないのだろうと思っていました。『サザエさん』ファンではないという前提で、読んで頂けると嬉しいです。

 そんな私が、4月6日(日)の夜、実に久々に『サザエさん』を観ました。なぜか?それは、新しい年度が始まって最初の週末だったからです。新社会人になった人、新しい期を迎える人が、どのように番組を見るのか?自分も体感しようと思ったからです。

 久々に見た感想とは?いやあ、人々がサザエさん症候群になる理由がよくわかりましたよ。なぜか?そこには、今ではあり得ない、良い意味で昭和的な幸せな世界が広がっていたのです。もともとは、ありふれた日常を描いたものだったはずなのですが、平成25年の今みると、あり得ない世界になっているのです。

 まず、家族構成がいまやなかなかない感じです。まあ、サザエさんがカツオやワカメの母ではなく、お姉さまだったという事実自体、驚きなのですが、それ以上に、親子3世代同居というのは、いまやごく少数派です。2010年度の国勢調査によると、親子3世代で住んでいる家庭は7%にすぎません。地方では多く、東京では少ないのも特徴です。都内で親子3世代同居している家庭は2%にすぎません。しかも、あの親子3世代の仲の良さは異常です。

 他にも、マスオさんは正社員ですし、30代で係長です。日本労働組合総連合会『2011年春季生活闘争連合 賃金レポート 役職別の人員構成と賃金』によると、学歴・性別を問わず、従業員1000人以上の企業で見てみると、2010年の時点で部長職は2.5%、課長級が7.0%、係長級が6.0%、他役職が6.5%となっており、非役職者は77.9%です。劇中のマスオさんとほぼ同じ年令だと思われる、男性大卒35~39歳においては部長級がすでに1.1%、課長級が9.3%いるものの、係長級は15.9%、他役職が9.7%となっており、非役職者は64.1%です。実はスピード出世だということが言えます。

 さらには、サザエさんは、専業主婦です。専業主婦になりたい女性は増えていると言われていますが、実際になれるかどうかは別問題。そもそも、結婚できているという時点で婚活時代の現在とは違いすぎます。

 そして、マンネリという批判を簡単にスルーできるほどの、いつもと変わらない、V.S.O.P(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)の展開です。

 こりゃ、平成の時代を生きる我々が見たら、ブルーにならざるを得ないでしょう。

 すでに『サザエさん』と現実は、大きく乖離しています。いまは、「昔はよかった」的に見ることができますが、あと10年もすれば子どもたちは「日本昔ばなし」のように見ることでしょう。

 私たちは平成の厳しい世の中を生きています。その現実はすぐには変わりません。サザエさん的世界などもうないのです。昭和にしがみつくのはやめて、今を生きましょうよ。サザエさんは既に御伽話なのです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン