国内

財務官僚「政府が北朝鮮危機煽るのは参院選有利にするため」

 本誌名物企画の覆面官僚座談会。今回は北朝鮮危機を煽る政府や霞が関の意図について4人の官僚が語り合った。(司会・レポート/武冨薫)

 政府はつい最近まで北朝鮮の中距離弾道ミサイル「ムスダン」発射の危機に警鐘を鳴らし、今も「危機解除宣言」はされていない。菅義偉・官房長官は連休中、「いかなる事態にも対応できるように常に緊張感を持って取り組んでいる」(4月30日)と語ったが、そのさなか、安倍首相、麻生太郎・副総理、小野寺五典・防衛相を含めて大臣12人、副大臣・政務官をあわせると25人が外遊で国を留守にしていた。これで危機管理が万全といえるのか。

「そもそも大した危機なんてなかったんじゃないの。北の挑発に過剰に反応したのは日本のメディアだけ。韓国も国民はそんなに慌てていなかった」――財務省中堅のA氏がやけに冷ややかな言い方をする。

「自民党にとっては北朝鮮危機や尖閣危機をクローズアップした方が参院選にプラスになるし、憲法改正論議にも追い風になる。これから選挙が近づけば、また『北が……』と煽り始めるさ。政治家の常套手段じゃないか。安倍政権には今回の外遊で危機管理よりもっと重要な仕事があった。そうでしょう、Bさん。今井尚哉・総理首席秘書官殿はいい仕事をしたよね」

 総務省ベテランのC氏がニヤニヤしながらそう経済産業省中堅のB氏に矛先を向けた。

「何のことですか?」と厚生労働省若手のD氏が口を挟む。財務Aが説明した。

「原発輸出だよ。総理は今回の外遊でUAEとの原子力協定に署名し、トルコでも原子力協定締結で合意して日本企業の受注を後押しした。いまや総理側近として官邸を仕切る今井首席秘書官、柳瀬唯夫・秘書官は2人とも経産省きっての原発推進派だ。総理は2人の振り付け通りの外交成果をあげたというわけ」

 総務Cが続く。

「総理だけではない。インドを訪問した麻生副総理はシン首相を5月末に日本に招聘し、そのときに中断している日印原子力協定の交渉を再開することになっている。甘利明・経済再生担当相はベトナムで原発輸出のダメ押しをした。安倍総理、麻生副総理、甘利大臣は政権の屋台骨を支えるAAAラインと呼ばれるが、今回の外遊ラッシュで注目すべきはこの3人の動きだと見ていた」

 黙って聞いていた経産Bがようやく口を開いた。

「甘利大臣はTPP(環太平洋経済連携協定)担当。原発は所管ではない」

 総務Cがなおも追撃する。

「甘利さんは第1次安倍内閣の経産相時代に日越原子力協定締結に道筋をつけ、いわば原発輸出の井戸を掘った人。ベトナムには今年1月に安倍総理が訪問したばかりで、今回は農業分野のTPP交渉のために林芳正・農水相も訪問した。どうして何人もベトナム詣でをする必要がある? 

 ベトナムではまだ日本が建設する原子炉のタイプも決まっていないし、資金協力の交渉もある。それを軌道に乗せないと、他国での原発受注競争に影響が出るから経産省は焦っている。それが外遊ラッシュの舞台裏だよ」

 そういうことか。安倍政権は国を留守にして「原発売り込み」行脚をしていたということなのだ。

※週刊ポスト2013年5月24日号

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