ビジネス

ピューロランド黒字化 中華圏女子のハローキティ人気が後押し

 ハローキティなどの“カワイイ”キャラクターで知られるサンリオのテーマパーク「サンリオピューロランド」(東京都多摩市)。1990年12月オープンだが、1991年4月オープンの「ハーモニーランド」(大分県日出町)とともに長年、赤字を出し続け、同事業はサンリオにとってお荷物ではないかと指摘する株主もいた。ところが、2014年3月期にはサンリオピューロランドが黒字に転換する見込みだという。

 最近のピューロランド入場者数(3歳以下の無料入場者を含む)をみると、2009年が108万5000人、2010年に113万7000人に、2011年は東日本大震災の影響があったにも関わらず113万3000人、2012年は115万4000人と一貫して増加傾向にある。ピューロランドを運営する株式会社サンリオエンターテイメント広報宣伝課の真鍋和弘さんがいう。

「今期は7月20日に新エリア『サンリオタウン』がオープンします。大幅なリニューアルはオープン以来初めてです。サンリオ世代の20代、30代の女性など新規顧客層の拡大、リピーター増加が予想されますので入場者数は3割増になると見込んでいます。外国からのお客さまも今年度は昨年よりも2万人増が目標です」

 日本で育った女の子なら一度は通るサンリオキャラクター。ところがテーマパークは立地の不便さなどを理由に長らく苦戦を強いられてきた。そのピューロランドが黒字転換した背景には、中華系女子の援軍も大きいというのだ。

「尖閣問題以降、中国本土からは減ってしまいましたが、外国人の8割を占める台湾や香港など中国語圏からは多くの方がいらしています。他にはタイ、マレーシア、シンガポールやインドネシアからが増えているのが目立ちます。集計は団体旅行だけが対象ですが、香港からは集計されない個人旅行の方が増えているようです」(前出・真鍋さん)

 家族で出かけたのをきっかけに繰り返し訪れ、今では年間パスポートを購入して家族でリピーターになってしまったという通信会社に勤めるサラリーマンが語る。

「最初は『着ぐるみのショーだろう?』と思っていたら、予想外に本格的なミュージカル風のショーで驚きました。とても一日では見きれないです。東京ディズニーランドにもときどき行きますが、ピューロランドの方が外国人観光客が多いように思います。Facebookのピューロランドページを見ても、外国人、特にアジアからのファンの書き込みが多いですよ」

 サンリオといえば、なんといっても看板キャラクターは1974年に誕生したハローキティだ。口のない白いネコで、頭がとても大きい。そっけないほど詳しい設定がないが、1990年代半ば、歌手の華原朋美がテレビ番組でキティ好きを公言してから、日本では大人向けのキティ商品が増え始め沈滞していたハローキティ人気に再び火がついた。その後、このブームは日本にとどまらず、アジア全体に広がった。

 1999年6月、香港ではマクドナルドが限定のキティちゃんぬいぐるみとタイアップしたキャンペーンを実施したところ、大成功をおさめた。続いて台湾でも同様のキャンペーンをマクドナルドは行ったが、初日にわずか4時間でぬいぐるみ50万体を売り切った。その後、同様のキャンペーンを行ったシンガポールでは、ぬいぐるみを求めて集まった客によって店のガラス戸が砕けケガをして入院した人も出るほどの事件となった。

 その後のキティちゃんは特にアジアの若い女性への人気は広く定着した。ただし、彼女たちの受け入れ方はキッチュでキュートな流行として取り入れているスーパーモデルのタイラ・バンクスや、歌手のマイリー・サイラスやケイティ・ペリーが言う「キティ好き」と少し違う。

『中国嫁日記』(エンターブレイン)『月とにほんご』(アスキー・メディアワークス)の作者で、現在は中国・広東省に住む井上純一氏は、中国女性にとってハローキティは特別な存在だという。

「日本発のキャラクターはどれも中国の女性に大人気ですが、ハローキティはその中でもダントツの一番です。もともと台湾や香港での人気が中国本土へも広がりました。ハローキティはしっぽが短い日本らしいネコキャラクター。マンガやアニメキャラクターのような詳細な物語を持ちませんが、そのために余白が多いので感情移入しやすく、憧れの存在になりやすいようです」

 憧れを反映してロマンティックな雰囲気まで持つため、北京にあるハローキティがテーマのレストランはカップルがプロポーズする場所として人気で、店側は「プロポーズの成功率100%」と現地メディアの取材に答えている。

「ピューロランドの結婚披露宴はまだ日本語対応だけですが、今後は外国のお客様にも対応できるよう考えていく方向になるでしょう」(前出・真鍋さん)

 円安効果も手伝って、ピューロランドが日本を代表する観光地となる日は近いのかもしれない。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト