芸能

『木枯らし紋次郎』演じなかったから上手くいったと中村敦夫

 元参議議員、キャスター、作家、脚本家と様々な顔を持つ中村敦夫氏だが、彼が世間に知られる存在となったきっかけは、1972年に市川崑監修のテレビ時代劇『木枯し紋次郎』で主役に抜擢された俳優としての顔だった。俳優・中村敦夫が振り返る初めてのテレビ時代劇の思い出を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が綴る。

 * * *
 中村敦夫の代表作といえばなんといっても、1972年のテレビ時代劇『木枯し紋次郎』(フジテレビ)だろう。「あっしには関わりのねえことで」という台詞に代表される、感情を表に出さない厭世的な紋次郎のキャラクターは高度成長に陰りの見えてきた1970年代初頭の内省的な世相に見事にマッチして、大ヒット番組となった。が、新劇を中心に活動し、時代劇はわずかな脇役の経験しかなかった中村は当初、役柄を掴みきれないでいた。

「今までの時代劇に登場しなかったキャラクターですから、初めはどういう人物か分かりにくかった。市川崑監督も、そういう説明はしてくれませんから。市川さんは自分のイメージした絵から入る人で、僕には『そこで上を向いて立っていろ』『走って、突然止まって、振り向け』とかしか言わない。僕は『なぜ上を向くのか』分からないままやっていました。『紋次郎はこういう奴なのかな』と探りながら進んでいくしかなかった。

 基本的に映画やテレビドラマの芝居はリアリズム。現実の再現に近いほど迫力があります。細かいところをカメラは捉えるから、あまり誇張するとおかしく映る。それに演劇だと地声で全部届かせなきゃいけないから、呟く時でも大声になりますが、映画だとマイクロフォンが呟き声でも拾ってくれる。ですから、演劇的な手法を映画に持ち込んだら様式的すぎて、リアリティがなくなってしまう。

 僕も最初は戸惑いましたが、『演じる』という気持ちがあまりない方が自然に映るということが段々と分かりました。『紋次郎』が上手くいったのは、まさに『何もしなかった』からです」(中村)

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか。

※中村敦夫氏は朗読劇『山頭火物語』を8月30日~9月1日(日比谷図書文化館 地下コンベンション・ホール)、11月2日・3日(岩波書店アネックスビル3F・岩波書店セミナールーム)で公演予定。入場は予約制。

※週刊ポスト2013年8月9日号

関連記事

トピックス

2025年11月、ホーコン王太子とメッテ=マリット妃
《彼女は17歳だよ。きっと楽しいと思う》ノルウェー王室激震、エプスタイン元被告と次期王妃の“黒塗り”メール――息子マリウスは“性的暴行”裁判渦中 
NEWSポストセブン
現地では大きな問題に(時事通信フォト)
《トゥクトゥク後部座席での行為にタイ現地の人々が激怒》フランス人観光客の“公開露出”に目撃者は「丸見えだった」 入国ブラックリストに
NEWSポストセブン
父・落合信彦氏の葬儀で喪主を務めた落合陽一氏
「落合信彦の息子という記述を消し続ける時代があった」落合陽一氏が明かした、父について語り始めた理由“人の真価は亡くなった時に分かる”【インタビュー】
NEWSポストセブン
本来であれば、このオフは完成した別荘で過ごせるはずだった大谷翔平(写真/アフロ)
《大谷翔平のハワイ訴訟問題》原告は徹底抗戦、大谷サイドの棄却申し立てに証拠開示を要求 大谷の“ギャラなどの契約内容”“資産運用の内幕”が晒される可能性も浮上 
女性セブン
表舞台から姿を消して約1年が経つ中居正広
《キャップ脱いだ白髪交じりの黒髪に…》「引退」語った中居正広氏、水面下で応じていた滝沢秀明氏からの“特別オファー” 
NEWSポストセブン
菅直人・元首相(時事通信)
《認知症公表の菅直人・元総理の現在》「俺は全然変わってないんだよ」本人が語った“現在の生活” 昼から瓶ビール、夜は夫婦で芋焼酎4合の生活「お酒が飲める病気でよかった」
NEWSポストセブン
弾圧されるウイグルの人々(日本ウイグル協会提供)
【中国・ウイグル問題】「子宮内避妊具を装着」「強制的に卵管を縛る…」中国共産党が推進する同化政策・強制不妊の実態とは…日本ウイグル協会・会長が訴え
NEWSポストセブン
大場克則さん(61)(撮影/山口比佐夫)
《JC・JK流行語大賞は61歳》SNSでバズる“江戸走り”大場さんの正体は、元大手企業勤務の“ガチ技術者”だった
NEWSポストセブン
中村獅童と竹内結子さん(時事通信フォト)
《一日として忘れたことはありません》中村獅童、歌舞伎役者にならなかった「竹内結子さんとの愛息」への想い【博多座で親子共演】
NEWSポストセブン
週末にA子さんのマンションに通う垂秀夫氏
垂秀夫・前駐中国大使が中国出身女性と“二重生活”疑惑 女性は「ただの友達」と説明も、子供を含む3ショット写真が本物であることは否定せず 現役外交官時代からの関係か
週刊ポスト
青木淳子被告(66)が日記に綴っていたという齋藤受刑者(52)との夜の情事を語ったのはなぜなのか
《不倫情事日記を法廷で読み上げ》「今日は恥ずかしいです」共謀男性社長(52)との愛人関係をあえて主張した青木淳子被告(66)が見せていた“羞恥の表情”【住職練炭殺人・懲役25年】
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長も流出の被害にあった過去が(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長の誕生日会》かつては「ご祝儀1億円」の時代も…元“極道の妻”が語る代替わりのXデー