――機械が作るからといって、本当に間違いはないんですか? ちょっと不安があります。
龍:機械が作るという認識には少し誤解があると思います。インビザラインの場合、マウスピースの作成は全世界共通のシステムで行われていますので、全ての歯型や写真はアメリカで集約され、コンピューターグラフィックを作成し、それをもとにドクターが設計図をコンピューター上で作成します。つまり、設計図を描く作業はコンピューターで行いますが、設計をしているのは歯科医師です。そういう意味では逆に患者さんのご要望を再現することもできます。実際はドクターの経験やイマジネーションに左右されます。欠点といえば、アメリカに資料を提出してから実際に矯正スタートするまでには6週間程度かかってしまいます。ワイヤー矯正の場合この期間はかからないので、スタートは早いと思いますね。なのでその分の期間を短縮できるような設計や技術、経験を持つドクターを選ぶこともポイントだと思います。
――全ての人に使えるわけではなく、顎関節症の人や虫歯を持つ人はNGなど治療できる症状が限られるという説もありますが?
龍:ワイヤー矯正であれ、マウスピース矯正であれ、重度の歯周病や極めて高い虫歯のリスクを持つ人は、矯正することができない場合があります。マウスピースだからといって特定の症状が助長されることは考えにくいですね。顎関節症についても、多くの場合治療にマウスピースを使いますから、マウスピースを使うことが顎関節症を助長するケースは逆に少ないはずです。
――食べかすが残ったままマウスピースをしてしまうと、虫歯のリスクがありますよね?
龍:確かに、マウスピースは歯に接着させているわけではないので、マウスピースと歯のすき間に着色物や糖類、酸が長時間停滞すると虫歯になりやすくなります。ですから食べた後はしっかりと歯を磨く。そして飲み物を飲むときにはストローで飲む。そういう手間があるからこそ、歯磨きの頻度があがって虫歯になりづらくなりますし、逆に間食するのが面倒くさくなって痩せた、なんて声もありますよ(笑い)。
――ワイヤー矯正と同じく、マウスピース矯正でも抜歯するという先生がいますが?
龍:マウスピースでも抜歯をするケースはあります。しかし、既存の矯正方法では抜歯して歯の移動スペースを作ることが多かったのに対しマウスピース矯正の場合は抜歯するケースよりも、歯を削ってすき間を作って歯を移動させるケースが多いのです。といっても削るのは、歯と歯のすき間を最大で0.5mmです。
矯正以外の場合でも、たとえば虫歯が大きくなりすぎてしまった歯でも、可能なら抜歯を避けたいと思っているかたがほとんどですよね。そう考えると、健康な歯を抜かなくていいことの方がメリットは大きいのではないでしょうか? しかも、もともと隣接面は虫歯の好発部位です。虫歯という点で見ると、アメリカの論文でも、いまだに歯を削ったことで虫歯になりやすくなったという報告はありません。
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なるほど。全く欠点がないわけではないけれど、仕事の時間帯が不規則な私にとっては、“毎月必ず受診せずに済むところはラク”というのは魅力的だし、抜歯を避けられそうな点はホッとひと安心。あとは、ズボラな私が、20時間以上欠かさず装着できるかどうかが問題だ!