芸能

Woman満島ひかりに対峙する田中裕子は「怪優の域」と女性作家

 水曜夜の話題ドラマ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は、脇役の存在感に注目した。

 * * *
 ドラマ「Woman」(日テレ系水曜10時)が反響を呼んでいます。満島ひかり演じる青柳小春は、シングルマザー。不慮の事故で夫に先立たれ、2人の子を抱えてサバイバルしようと格闘する。

 当初、物語はシングルマザーの貧しさや苦しみをリアルに描き出すところからスタートしました。しかし、回を重ねるにつれ、主人公・小春とその母・植杉紗千(田中裕子)との「こじれた関係」が浮き彫りに。

 ドラマの重点も、母子家庭の大変さから、「小春と紗千の関係」へと移り、さらに紗千の娘・栞との関係もからんで、いっそう複雑でスリリングな展開になってきています。

 小春と紗千の間に流れる、冷たく緊迫した空気。過去の複雑な事情から生まれてしまったらしい、母と娘の間のしこり。それは、愛情から転じた深い憎しみ。簡単には解きほぐせない、固い固いわだかまり。

 満島ひかりと田中裕子。

 二人の役者が、娘と母として全身全霊をかけて問題に向き合うシーンは、息もつけないドラマツルギーに満ちています。視聴者は固唾を呑み、目は画面に釘付け。

 何といっても、満島ひかりという役者の集中力はもの凄い。一方、母を演じる田中裕子の、微動だにしない表情も迫力です。

 本当は娘を愛したい。なのにみじんも表情を崩せない母。ぴくりともしない顔の筋肉。あまりに孤独な母の姿を、浮き彫りにする田中裕子。それはもはや、「怪優」と呼ばれていい領域。凄みと深みを感じます。

 そして、もう一人。紗千の娘・栞を演じる二階堂ふみが、不気味な存在感を放っている。二人のこじれた関係を脇でじっと見つめつつ、残酷な揺さぶりかけていく難しい役を、実に的確に演じきっている。

 満島ひかり、田中裕子、二階堂ふみ。世代の違う三人の女優が、「Woman」の劇的世界をしっかりと支えています。

 だからこそ、一つだけ残念でならない点が。主人公・小春が「再生不良性貧血」を発症する、という物語設定です。「命に関わるかもしれない大病」は、このドラマに果たして必要でしょうか?

 どうしようもない親子の「ねじれ」を、登場人物たちが自力で解きほぐし、何とか解決しようと格闘している。それなのに。

「命を人質にとるような出来事」が割り込んできたら?「生き死に」が関わる重大事が起こったら? 人と人とがぎりぎりまで向き合う、という普遍的なテーマが、ズレていってしまいませんか。

 テレビを見ている視聴者の日常には、大事件なんてほとんど起こらないし、生死を問われる重大事が起こることも稀でしょう。ただ平凡な日常の中でささやかな、しかし本人とっては深刻な問題に直面し、何とかそれを解決して前向きに生きていこう、ともがいている。視聴者は自分自身の人間関係にある「ねじれ」をドラマに重ねて、解決のヒントと勇気をもらおうとしている。

「Woman」は、そんな「普通」の人々に勇気を与える秀逸なドラマになりつつあるのです……。それなのにもし、ドラマの後半が、「生死を問われる重病」という刺激的な出来事に寄りかかって展開するのだとしたら? あれだけ過酷だった娘と母のあつれきも、「偶然の病」を機に一気に和解してしまうとしたら……なんとも残念。そう感じるのは、はたして私だけでしょうか? 

「Woman」が多くの人の心に響く普遍的なドラマに昇華していくことを、切に期待しています。

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