国際情報

台湾の若者の間で日本統治時代に建設された日本家屋がブーム

1925年建設の日本家屋を利用した台北市のカフェ

 中国・韓国が日々、反日を叫ぶ一方で、隣国・台湾ではいま“日本ブーム”が起きている。日本統治時代につくられたごく普通の日本家屋が古き良き時代の日本カルチャーを支持する若者を中心に人気を博しているという。

「休日には予約が殺到し、昨日は平日ながら満室でした。学生など若いお客さんは、日本の着物を着て記念撮影に興じています」

 そう語るのは、台湾・新北市で民宿を営む林聰興氏。地域は日本統治時代に炭坑の街として栄え、民宿は当時の日本家屋を再生利用している。その名も『北海道民宿』。かつて住人が、建物の前の道を「北海道に似ている」と懐かしんだことに由来する。

「押し入れなど、内装も日本様式のままです。手を加えると、若い人たちが怒るんですよ」(林氏)

 多くは日本を感じたくて訪れるといい、「トトロが好きで泊まりにきた」といった宿泊者の声も。台湾では日本のアニメや音楽、ファッションなどを好む若年層は「哈日(ハーリー)」と呼ばれ、日本時代を知る「愛日」「懐日」の老年層と並ぶ、親日家とされている。

 旧台湾総督府庁舎が、現在も「総統府」として行政の中枢にあるなど、台湾には日本統治時代の歴史的建物が未だ多く残っている。そして近年、古い日本家屋を再生利用する動きが全土に広がって新施設も続々とお目見えし、“古き良き日本”が見直されている。

 その筆頭が、台北市内の『青田七六』。台湾帝国大学の足立仁教授が1930年代に設計建築した私邸を台湾大学OBらが2011年に再生した。政府による画一的な建築とは違う個性的な歴史建築を守り、台湾の発展に大きく寄与した先人の学問探究精神を引き継ぐ展示施設となっている。

 当時の日本家屋の特徴を色濃く残し、畳に座る異文化体験ができる和室は「タイムスリップした気分」と人気で、老屋新生の金牌を受賞した。青田七六ファンの若者が日本家屋を再生利用したカフェを開くなど、昨今の日本レトロブームを牽引する。再生の発起人のひとり、水瓶子氏が思いを語る。

「政府から民間へ所有権が移るにつれ、どんどん建て替えられていく日本家屋を保存しようと、仲間と立ち上がりました。最近は若い人にも同じ意識が芽生えて嬉しい」

 木造のクラシックな日本家屋を愛でる台湾の若者たち。同じ光景は地方都市にも広がっている。余談だが、台中市のある茶店では日本統治時代から続く畳店で畳替えをしている。そしてその店は、東日本大震災の際に日本へ畳を送ってくれた。

 中国や韓国の反日感情渦巻くニュースを目にすることが多い。しかし、あまり報じられることはないが、アジアにはこのような親日国家も確実に存在している。

撮影■太田真三

※週刊ポスト2013年8月30日号

関連記事

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン