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部屋が線路沿いのため携帯が頻繁に遮断 家賃の減額は可能か

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「部屋が線路沿いのため携帯が頻繁に遮断。家賃の減額は可能か」という質問が寄せられた。

【質問】
 住んでいるコーポが鉄道の線路沿いで、電車が通るたびに携帯の電波が遮断されます。固定電話は必要なく、また賃貸契約書には電波遮断に関して記されていませんでしたが、現状は不便で困っています。他は快適なので引っ越しはしたくないため、電波の遮断を理由に部屋代の減額を申し出てもよいですか。

【回答】
 少なくとも、ご質問からは、契約書には明示的に携帯電話が使えますという保証はないものと思います。そうすると、あなたの要求が通るのは、携帯電話の電波が支障なく届くことが、暗黙の裡に契約の内容になっているか、もしくは特に契約の内容としなくても当然、建物に備わるべき品質になっていることが前提です。

 もし、こうした条件があれば、大家は契約に違反していることになります。一種の故障と考え、大家の修繕義務のひとつとして理解できます。その場合、大家にはこの支障を解消する義務があり、それまでの間、家賃をある程度、減額することの請求は可能です。

 もっとも、どれぐらいの減額が妥当かは協議がまとまらなければ、最終的に裁判所が決めることになりますから、それまで勝手に減額して支払っていると、そこまでの減額が認められなければ、家賃の滞納として契約解除される可能性があります。安易な減額支払いは危険です。

 しかし、電波の遮断が鉄道の電車の通行の結果であるとすれば、コーポが原因ではなく、建物が位置する環境が原因です。電車の運行で携帯電話の遮断が起きるのであれば、貸借契約において、上記のような条件が暗黙の裡に合意されることは、まずないと考えられます。

 また、あなた自身も現地を見て賃貸借契約をしているのですから、携帯への支障もある程度予見しえたといえます。賃貸借建物の利用形態から携帯使用が必然というのであればともかく、普通の住居であるとすれば、携帯の電波に支障があるという点から、通常の平穏な住環境が損なわれているとはいえないと思います。

 したがって、減額を申し出ることは問題ありませんが、大家が応じない場合に裁判までして争うことはやめた方がよいと思います。

※週刊ポスト2013年9月6日号

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