国内

暴走族OBが結成した「旧車會」 鉄の掟は交通ルールと世間体

 強い日差しが照りつける夏の日曜日。まだ午前中だというのに、神奈川県厚木市内の県道に、けたたましいマフラー音をあげながら改造バイクの集団があらわれた。その数ざっと90台。誰がどう見ても“暴走族”な出で立ちに、周囲の乗用車に緊張が走る。

 そんな時、集団のテールランプが一斉に赤く染まった。いったい何事かと車列の先に目をやると、赤信号で停車しているではないか! しかし、これこそがこの集団の“掟”である。

 彼らは、暴走族OBを中心に結成された「旧車會」(きゅうしゃかい)と呼ばれるグループのひとつ。主宰者の男性は、「うちには3つのルールがある」という。

「まず、信号は絶対に守る。次に、2車線ある時は必ず、ほかの車が通過できるように1車線は空ける。そして最後に、スピードは50kmぐらいしか出さない。これが守れない人は絶対に参加させません!」

 交通ルールを守るのが最大の掟─現在全国に600近い団体があるという「旧車會」について、アウトロー文化に詳しい評論家の松永達也氏が解説する。

「似たような組織に大型二輪愛好家が集ってツーリングを楽しむ『旧車会』がありますが、『旧車會』は暴走族の取り締まり強化を機に、暴走族OBによって結成されたもの。働いている社会人がメインなので主に祝休日の昼間に活動し、終わったらバイクを置いて、みんなで焼肉などの食事に行くのが定番。まるで休日の草野球感覚です」

 暴走族といえば10代限定、女は御法度のはずだが、この「旧車會」の参加者は、下は16歳から上は40代までと幅広く、若い女性もちらほらと見かける。叔父さんに付いてきたという小学5年生の男の子は、「みんなで走るのは楽しい」と笑顔を見せた。

 ただし最近では、旧車會のなかにも本当に暴走して警察に逮捕される過激なグループも目立ち始めており、「神奈川の旧車會ではコンビニ休憩も少人数で行くなど、さらなるマナー向上に努めているそう」(前出・松永氏)。大人になった暴走族の“掟”は、「交通ルール」と「世間体」だった。

※週刊ポスト2013年9月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン