ビジネス

日本初の国産接着剤 「セメダイン」90年の歴史を振り返る

 日本を代表する接着剤・セメダインの歴史は、1919(大正8)年に、創業者の今村善次郎が接着剤の研究に着手したことにはじまる。善次郎は当時29歳。彼は靴墨やワックスの開発にも着手していた。

 会社創立は4年後の1923年。当初は「今村商店」といった。同年、獣脂や骨から抽出する膠(にかわ)を主成分に日本初の国産接着剤「セメダインA」が完成する。

 それまでの日本においては、漆や米、麩の糊が主役で、明治期になって欧米から膠をコロイド状にしてチューブ詰めした外国製品が輸入された。だが、これらは高価だったうえに、水に弱く耐熱性にも問題があった。

 日本製の安価で高性能の接着剤を──善次郎が「セメダイン」に託した想いは強烈だ。「セメント」と力の単位「ダイン」を組み合わせただけでなく、トップブランドだった英国製「メンダイン」を「攻め」ようと、「攻め出せ、メンダイン」という気概が込められている。

 何より、当時の日本では「糊」とか「接合材」という呼び名こそあったものの「接着剤」の名称はない。接着剤そのものが善次郎の創作した言葉なのだ。

 以来、戦前から戦中、戦後とセメダインは躍進を続ける。シンボル的商品「セメダインC」の発売は1938年、プラモデルや模型飛行機作りに欠かせない接着剤として人気を博していく。

 1968年には東証二部に上場、同時に五反田に新社屋を完成させた。1974年には東京工場を閉鎖し、機能を茨城工場に移管させた。

 新幹線や本四連絡橋、東京都庁新庁舎、リニアモーターカー、アクアライン……セメダインは時代を代表するプロジェクトで採用されてきた。シンナー、トルエンに代表される溶剤を使わない接着剤の開発を進め、環境問題にも積極的だ。

 現在セメダインの本社は品川区大崎にある。開発センターや3か所の生産拠点、国内7か所の営業拠点と7つの主な関連会社を有し、中国や台湾でも生産、販売を手掛けている。

※週刊ポスト2013年9月13日号

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン