ライフ

孤独死予備軍の共通項 友達、社会参加、関心ナイナイ尽くし

 総務省の2010年国勢調査によると、高齢者人口(65歳以上)は約2924万6千人、単身世帯は約479万1千世帯で、高齢者人口の約16.4%にのぼった。おひとりさまの高齢者は、仕事を引退後、新たに友達をつくることが難しい男性に多く、現役時代の肩書を引きずる人にも多いといわれる。彼らを孤立させないためには、どうしたらよいのか。

 地域一帯となって独居老人を見守ろうという取り組みも最近は増えてきた。

 阪神・淡路大震災後にできた復興住宅に住む76歳の男性もそうした取り組みに参加する一人。周辺は、100世帯以上ある住宅地になっているが身寄りのない高齢者も多い。男性自身も、夫人には20年以上前に先立たれている。そこで地元の有志6人と“見守り隊”を結成したという。

「孤独死のサインのひとつが、ドアに差し込まれっぱなしの新聞。こうなると中で倒れている可能性が高い。それで助かった方もいます」

 信頼できる間柄同士、スペアキーを預け合うこともあるという。男性も既に76歳、パトロールするのが辛いときもある、と零すが、「60歳を過ぎると、今住んでいるところで死にたいと思うようになるんですよね」と地元への思いも語る。

 一方、発想を180度転換し、定年を機に新しい土地へ飛び込む人もいる。65歳男性は、神奈川から東北へ。

「田舎暮らしに憧れていたので5年前に思い切ってここに庭付きの家を買いました。近所には魚が旨い店があって店のオヤジとも仲良くなりましたよ。釣りや野菜作りを通じて近所にも仲間が増えてきたところです」

 北海道に移住した66歳男性には、後日、夫人が合流する予定になっている。

「一人で先行して来たものだから気付くと1週間、誰とも口をきいていないことがあって、これはヤバイと」

 そこで町の名所旧跡を巡る会や俳句の会合に参加し、知り合いを増やしている。

「徳は孤ならず、必ず隣あり、ですから。新たな関係を作っているところです」

 アドバイスはというと「近所との関係を有効に保つこと」。都会とは比べものにならないほど濃密な人間関係。負の面も否めないが、そこで余生を送るのではなく、そこで畑仕事をするなど目的がしっかりしていれば、そのための人間関係は適度に広がっていく。

 仕事を通じ趣味を通じ、または暮らし慣れた地域の人と新しい土地の人と──新しい人間関係は、どこにどんな形で築いてもいい。

 重要なのは、今から来るべきそのときに備えておくこと、そしてその暁には、会社員時代のプライドの一切を捨てることだ。

 その覚悟さえ決まれば、次の一歩は意外と簡単。これから親しくなるかもしれない人への挨拶をしてみてほしい。

『隣人の時代~有縁社会のつくり方』(三五館)著者の一条真也氏はいう。

「孤独死予備軍には共通項があって、友達がいない、社会参加をしない、何事にも関心をもたない……とナイナイ尽くしです。実はこれをアルに変える画期的な方法が一つある。挨拶をするということです。近所の方をみたらとにかく挨拶。これだけでオセロの黒が一気に白になるように世界は変わるものなんですよ」

※週刊ポスト2013年10月25日号

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン