芸能

リスナー200万「ラジオ深夜便」ゴールデンタイムは朝3~4時

 ラジオの深夜放送といえば、『オールナイトニッポン』に代表されるように長らく若者向けの放送と考えられていた。ところが、1990年に「ラジオ深夜便」が始まると、高齢者が新たに深夜放送のリスナーに加わった。今では異例の高い聴取率をもつ同番組の制作現場を、作家の山藤章一郎氏が訪れ、報告する。

 * * *
 渋谷〈NHK放送センター〉の13階〈ラジオセンター〉。学校の職員室ほどの広さが早朝班、夜間班などのシマに分けられ、24時間体制で〈NHKラジオ第1〉を放送する。夜9時20分、いまは静まり返って深夜班の6人しかいない。

 フリースペースで元・チーフアナウンサーの迎康子さんがパソコンに向かっている。定年後、シニアスタッフとして『ラジオ深夜便』をアンカーとして支える。

「今日のインタビューを忘れないうちに編集しちゃおうって。年取ると忘れっぽいですから」

 迎さんなど、実際に放送の最前線に立つ人をアンカーと呼ぶ。深夜11時20分から5時まで、土曜、日曜も欠かさず、14人のアンカーが交替して放送する。主に、以下の構成で成る。

〇日本の地方からの話題。
〇ポピュラーソングコンサート。
〇歌謡曲、おもいでのヒット曲などの再放送。
〇人生にチャレンジしている人へのインタビュー。
〇海外からの報告、自然観察記、「老後の幸せ」への提言など、放送の引き出しは豊富である。

 チーフプロデューサー・中村豊さんのコンセプト。

「お目覚めでしたらお付き合いください。眠かったらお寝(や)すみください、のスタンスです」

 リスナーは毎晩ほぼ200万人。視聴者事業局への反響は、『あさイチ』『ためしてガッテン』などに続いてNHKテレビ、ラジオ番組の中で、上位10位に入ることも多い。

「朝3時から4時、歌謡曲などを流しているときが、聴取者の多いゴールデンタイムです」

 11時19分。「そろそろ1分前です。今日もよろしくお願いします」ディレクターが声をかける。ブースの宮川アナが手をあげる。台風のニュースから始まり、11時30分、次のコーナーに続く。「日本列島くらしの便りです」

 電話で山中湖村の住民から村のイベント情報が伝えられ、11時58分「今日の日の出時刻をお知らせします」になる。札幌5時42分。仙台5時40分。東京5時43分。以下、那覇6時26分まで、全国11か所の夜明けの時刻を読みあげる。変わらぬ重要なキー放送である。

 引き出しには、他に〈アンカー企画〉もある。この日の宮川アンカーは、長く〈のど自慢〉の司会で毎週、旅に出ていた。「もう行ってないところはないぐらい。観光地ではなくこんな素晴らしいところがありますと、旅のディスクジョッキーというかたちで喋ってるんです」

 リスナーは60歳以上が相手である。入院中の人もいる。〈ゆったり〉を心がけているという。

「現役時代より口調を落としてね。昼間の番組は今に合わせますが、〈深夜便〉は、経てきた時代とキャリアと知識がそのまま出せる。しかも、ダイレクトに聴いてくださる人に届く。アナウンサー生活30数年、OBになって。意義深い番組です」

 アンカーは7時にNHKに入る。8時から夕飯。9時半から、選曲担当やディレクターと打ち合わせ。11時にスタジオ入り、朝6時、NHKを出る。

※週刊ポスト2013年11月1日号

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン