スポーツ

関根潤三氏 左利きだが中学時代は右用グローブ使っていた

 母はどんな時も無償の愛で包んでくれた。その偉大さを知ったのはいつのことだったか。慈母の記憶はいつも、懐かしい温もりとともに甦る。ここでは、野球解説者の関根潤三氏(86)が母・ハルコさんとの思い出を振り返る。

 * * *
 人生で一番怖かったのがお袋だね。新潟のお寺の娘だったから、曲がったことが大嫌いなうえ、気が強いしっかり者だった。

 だから反対に親父のいい加減さが目立ってね。親父は近所の人から“蝶々さん”と呼ばれていて、いつもフラフラしてどこかに飛んで行っちゃうような人だったから、お袋にしょっちゅう怒られていた。

「飯がまずい」なんていったら、お袋の右手が飛んできていたよ。ウチでは何をやるにしても、親父じゃなくてお袋の許可が必要だったんだ。

 だから僕が旧制の日大三中に入った時、野球部に入りたかったんだけど、最初は無理だと思っていた。お袋は「野球は不良がするもの」と信じ切っていて、猛反対するのが目に見えていたからね。実はこれは兄貴の影響が大きかったんだ。

 僕は男3人兄弟の末っ子で、兄貴2人も日大三中で野球をやっていた。兄貴たちは主将を務めるほど野球が上手かったが、筋金入りの不良でね。練習した後は夜遅くまで街をふらついてるし、タバコも女遊びも、教えてくれたのは兄貴たちだった。

 まァ、彼らもお袋の前では頭が上がらなかったんだけど、お袋は兄貴で懲りていたんだろうね。でも親父が野球好きで、「オレからうまくいっといてやる」と勧めてくれて野球部に入れた。

 ただ親父はなかなか約束を果たさなくてね。だからグローブも買ってもらえなくて、左利きなのに部室に転がっていた右利き用を使っていた。おかげで左利きのグローブを使い始めた時は、野球が簡単で仕方なかった(笑い)。

■関根潤三(せきね・じゅんぞう):東京都生まれ。現役時代は近鉄、巨人で活躍。大洋、ヤクルトで監督を務める。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
日本テレビの杉野真実アナウンサー(本人のインスタグラムより)
【凄いリップサービス】森喜朗元総理が日テレ人気女子アナの結婚披露宴で大放言「ずいぶん政治家も紹介した」
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン