ビジネス

イオンで一日過ごす「イオニスト」増殖で消費の定石変わった

 全国に約120か所ある巨大ショッピングセンター(SC)の「イオンモール」。そこで休日に一日中過ごす家族のことを指して、“イオニスト”なる造語まで登場している。

 千葉県に住む30代主婦は、休日だけでなく平日も週に2回は近所のイオンモールに出掛けるという。

「イオンに行けば食品スーパーはもちろん、100円ショップにユニクロ、マッサージ店やクリニックまで何でも入っています。小さな子供を連れて行っても安心なゲームセンターや運動遊具が利用できる施設もあるので、1日中いてもまったく退屈しませんね。フードコートで休んでから帰ろうと思っても、幼稚園のママ友に会ってつい長話……。家に帰ったら夜の8時を超えていた、なんてことはしょっちゅうです」

 また、埼玉県在住の60代男性は、イオンモールの中で最大級の広さ(約34万平方メートル)を誇る「イオンレイクタウン」(埼玉県越谷市)内をウォーキングするのが日課になっている。

「リタイヤ後の運動不足を解消するにはもってこい。kazeエリアとmoriエリアの端から端まで店をのぞきながらゆっくり歩けば優に1時間以上はかかりますし、なにより屋内で天気に左右されないのがいいですね。ウォーキングの後に安い床屋さん(QBハウス)で散髪することもありますよ」

 大型のショッピングモールはいまさら珍しくないが、なぜこれほどイオニストが“増殖”しているのか。それは単にテナントの数が多いからという理由でもなさそうだ。

「最近のイオンモールは、子供向けのテーマパークのほか、料理・音楽教室を増やしたりイベントスペースをたくさん設けて様々な企画を催したりと、モノを消費させるだけの空間(物販)からコト(時間)を楽しんでもらうモールづくりを強化することでリピーターを増やしている」(経済誌記者)

 来店客の中には何も買わずに帰る人も多いが、「とにかく客を呼び込む仕掛けが先で、テナントの売り上げは後からついてくる」(イオン幹部)との読みは当たっている。その証拠に、イオンモールの2013年3~8月期連結決算の純利益は前年同期比2割増の113億円で過去最高を記録した。

 そして、今年の12月20日にはイオン本社のお膝元である千葉市に「イオンモール幕張新都心」をオープンさせる。

 前出のレイクタウンに次ぐ広さで、スポーツ体験ができる「アクティブモール」や仕事体験テーマパーク「カンドゥー」、吉本興業の芸人が出演する劇場なども入居。まさにコト消費が詰まったイオンモール肝煎りの旗艦店に位置付けられる。

 年間の来場者数を「3000万~3500万人」と見込む幕張新都心店だが、課題も指摘されている。流通コンサルタントの月泉博氏が話す。

「2006年からリーマン・ショックの2008年まで続いた“モールバブル”はとにかく人気テナントを集めてどこも金太郎飴のように似たモールがたくさんできました。今はあのころとは違う新たな時代のショッピングセンター開発をしなければなりません。

 確かに幕張新都心は仕事体験ができるテーマパークなどを入れて工夫していますが、すでに競合のららぽーとには『キッザニア』がありますし、ららぽーとを超える突き抜けた魅力で支持されるかどうかはオープン後、しばらく見てみないと分かりません」

 来場者数の目標も「高いハードルが立ちはだかっている」と月泉氏はいう。

「幕張という場所柄、東京都内から人を逆流させないと3000万人は厳しい数字。『ダイバーシティ東京プラザ』(台場)や『渋谷ヒカリエ』、『KITTE』(千代田区)など成功する都市型モールを押しのけ、さらに『ららぽーとTOKYO―BAY』という最大の“関所”を超えて東京からどれだけ集客できるかが勝負でしょうね」

 郊外のメリットである広大な敷地を最大限に利用したコト消費で、都会のイオニストを囲い込めなければ、飽和するSC戦争に勝ち残れないということか。

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト