芸能

NHK『ごちそうさん』め以子の旦那には「昆布系」の魅力あり

 勢いのあるドラマには、何かしら「発見」があるものだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が注目しているのが、朝ドラでいい味を出している新人俳優である。

 * * *
 朝ドラ「ごちそうさん」が始まって1ヶ月あまり。スタート当初は、前作「あまちゃん」のフィーバーぶりに、次作はかなり苦戦するのではと不安も囁かれていましたが……。1ヶ月経過した「ごちそうさん」は大健闘。視聴率が27.3%を記録し(10月16日)、前作「あまちゃん」の最高視聴率を上回ったとか。

 そして舞台は大阪へ。悠太郎(東出昌大)と恋愛し、幸せな結婚生活を目指していよいよ食いだおれの街へ移った主人公・め以子(杏)。大阪の街でたくましく生きる庶民の世界が、いきいきと描かれています。

 当時の街の雰囲気、市場の賑わい、店の木彫り看板、台所の漆器や陶器、おくどさんで火を扱う様子……。細かい部分に演出の手抜きがなく、描写が丁寧です。

 でも、何と言っても、ドラマ世界を安定させている軸は、この人ではないでしょうか? 悠太郎演じる東出昌大くん。

 バリバリの新人さん。メンズノンノ専属モデルオーディションでモデルになり、2012年の映画「桐島、部活やめるってよ」で役者に初挑戦した人とか。

 悠太郎は、口数は多くない。過剰なリアクションや作った表情もない。前作の登場人物たちのように、笑わせようと大騒ぎして、視聴者に媚びたりしない。物静かで芯が通っている。そこがいい。堂々と背筋を伸ばして、どっしりと構えています。

 お世辞にも演技が上手とはいいませんが、演技歴などには関係なく、落ち着いたちょっと古風な物腰が、「ごちそうさん」世界をしっかりと支えています。

 それはある意味、古き良き日本男児の正当派。でも、亭主関白風を吹かせて偉そうに指示したりしない。め以子の最高の理解者なのです。

 居そうでいなかった、悠太郎像。東出くんの父親は剣道の先生でご本人も剣道三段の腕前とか。背骨がぴりっと伸びているのは修行のおかげかも。その爽やかさ、今の時代の空気と響きあっている。女の子にひたすら優しい「草食系」でもないし、一昔前のオレに付いてこい的な「肉食系」とも違う。野菜系でもなく、動物タンパク系でもない。そうです。東出くんの古風な魅力は、「昆布系」。

 ちなみに、味の基本をご存じでしょうか。基本味は5つ。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味です。「昆布のおいしさ」である「うま味」が発見されたのは約100年前。東京帝国大学の池田菊苗博士によって発見された「うま味」は、今や世界中に広がり、「umami」として国際的に認められました。

 東出くんの雰囲気は、うま味に支えられた「昆布系」と言っていいでしょう。というように、食べることをテーマにしたこのドラマの軸はぴしっと通っています。

 ただ最近は、め以子をネチネチいじめる悠太郎の姉のいけずな顔を朝から見たくない、という意見も聞かれたり。私個人としては、演出上のこととはいえ、お膳をひっくり返したり、手づかみで食べたりするのだけはやめて欲しい。と、つっこみどころはまだありますが、それは次回に。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン