ビジネス

「広く公平」な消費税は嘘 財界トップも増税を歓迎する理由

 安倍政権は「税と社会保障の一体改革」を唱え、増税にまっしぐらだ。増税ほど政治家・官僚が嘘をつく政策はない。

 そもそも消費税が導入されたときの名分が「高齢化福祉対策のため」だったのだから、今さら全額社会保障に使うと言わなければならないこと自体、これまで嘘をついてきたことの告白に他ならない。

 財政が苦しいと言いながら経団連の求めるままに法人税を減税し、国土強靱化に名を借りた公共事業に巨額を投じる計画なのだから、誰のための増税かは明白である。

『SAPIO』(2013年12月号)では、<消費増税は日本を滅ぼす「シロアリノミクス」だ>と題して、安倍政権の“嘘”を暴く大特集を組んでいる。その中からジャーナリスト・武冨薫氏のレポートを紹介しよう。

 * * *
 消費税が本当に「広く公平」な税制で、国民が一様に痛みを分かち合うものなら、増税を喜ぶ者がいるのはおかしい。

 財界は安倍首相の増税決定を「大変な英断」(米倉弘昌・日本経団連会長)と歓迎し、「財政再建」で予算を絞られるはずの霞が関は好機到来と予算獲得に目を輝かせている。

 なぜなら、「広く公平」な税制も、「財政再建のための増税」も嘘だからである。

 財務省は、消費税について〈財・サービスの消費が行われることに着目して課税される間接税〉で〈実質的な負担者は消費者〉と説明している。これは国民騙しだ。

 消費税という名前から、国民も企業も消費者が負担するものだと思い込まされてきた。

 しかし、法律には事業者の年間の総売り上げと仕入れの差額に5%を課税すると規定されているだけで、価格転嫁の規定もなければ、「消費者」という言葉さえ書かれていない。

「税の仕組みから言えば、消費税は明らかに法人事業税の一種」(消費税研究で知られる湖東京至・元静岡大学教授)である。

 そうした仕組みだから、国民の負担は増え、大企業は税率が上がるほど“臨時収入”を得る。それら企業の商品を購入する消費者は5%分を支払っているが、その中から国庫に入るカネは1円もないケースが山ほどある。

 そもそも「売り上げ」ではなく、本当の意味で「消費」にかかっている間接税なのであれば、企業や商店が納税者から税金を預かってそのまま国に納める。

 だが、売上高が一定以下の事業者などで生ずるいわゆる「益税業者」問題に象徴されるように、消費者が8%負担する税金は、そのまま国庫に入るわけではない。

 昨年会計検査院が中小企業など4699事業者を対象に検査したところ、約8割の事業者に益税が発生していた。国民が払う消費税の多くは“途中で消えている”のである。

※SAPIO2013年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト