「病気に絶対の予防法はありません。痩せていようが、食事や生活習慣に気をつけようが、身体を鍛えようが、人間、病気になる時はなるものなんです。特に心臓は命にかかわる。
病気を受け止め、手術を決断することが怖いことはよくわかります。ですがリスクを抱えたまま放置していても、心臓や冠動脈はどんどん悪くなるだけ。心臓が弱れば、手術しても回復できません。カテーテル治療は根治にならないと私が主張するのは、そのためなんです。早めに対処をすれば身体への負担も少なく、そればかりか効果も高い。もしもの際は、手術に踏み切る勇気を持っていただきたいのです」(南淵氏)
年齢で手術を断念する例も巷でよく聞きますが、それも医師の腕次第。私がいた病室の隣には、87歳と83歳の患者さんが同じくバイパス手術を受けて、ピンピンしてらっしゃいましたわ。
事実、他の病院から「80歳以上なので手術を断わられた」と、南淵先生を頼ってこられる患者さんも多いそうです。まさに医師との出会いが明暗を分けます。
私が目安としているのは年間100例の心臓手術をこなしているかどうか。それだけの場数を踏んでいる医師は全国でも数えるほどですが、そういう医師であれば安心して任せられるんやないでしょうか。
◆南淵明宏(なぶち・あきひろ)/1958年奈良県生まれ。奈良県立医科大学卒。国立循環器病センター、セント・ビンセント病院(シドニー)、シンガポール大学病院、新東京病院、大和成和病院などを経て、2010年12月より東京ハートセンター・センター長に。「ゴッドハンド」として知られる屈指の心臓血管外科医。
◆富家孝(ふけ・たかし)/1947年大阪府生まれ。慈恵医大卒。日本女子体育大学助教授、早稲田大学講師、青山学院大学講師などを経て、現在は新日本プロレス・コミッションドクター。著書に『医者しか知らない危険な話』(文春文庫)など。
※週刊ポスト2013年12月6日号