国際情報

韓国が中国に対し「侵略の罪を反省しろ」と迫らない理由とは

 20年以上前に遡る1991年、韓国と日本が歴史認識をめぐって法廷で争うという、現在を予見するような異色長篇小説が刊行された。本誌で「逆説の日本史」を連載中の作家・井沢元彦氏が書いた『恨の法廷』である。井沢氏はこの作品で、韓国の反日の根底には、「恨」の感情があると喝破したが、なぜ中国には「恨」を持つことはないのだろうか? 井沢氏が解説する。

 * * *
 歴史的に見て、朝鮮民族に対してもっとも屈辱を与えてきたのが中国であることは言うまでもない。辛うじて国家と民族の存在は許されても、臣下扱いされてきた時代が長いからだ。だが、韓国が中国に対して「侵略の罪を反省しろ」と強硬に求めることはほとんどない。事あるごとに、日本を批判するのとは対照的だ。その差はいったいどこからくるのか──それも『恨の法廷』の論点のひとつだ。

〈それは、客観的に見るならば、事大主義による差別意識でしょうな〉

 台湾人学者が説明を始める。

〈(事大主義とは)朝鮮の伝統的外交政策です。大に事えるから事大。この大というのはむろん中国のことなのだが〉

〈つまり中国は韓国の上位にある国だったから、そこから侵略されても、ある程度仕方がないとあきらめる。しかし、日本は韓国より下位の国だ、だから侵略されると腹が立つ。上司になぐられても我慢できるが、家来になぐられると腹が立つ、とまあ、こういう心理でしょうな〉

〈そういう心理の証拠がありますな。壬辰倭乱(文禄、慶長の役。1592~98年)ですよ。確か、韓国では、豊臣秀吉の侵略をこう呼んでおりますな〉

 そこにはどういう意味があるのだろうか。台湾人学者が解説を続ける。

〈乱とは『反乱』の意味で、ここには『本来家来であるべきものが』という意識が込められている〉

〈しかし、当時の日本は中国に朝貢もしていないし、まして韓国との関係は純然たる独立国の関係だ。だからいくら腹が立ったとはいえ、『乱』という言葉で呼ぶのはおかしいですな〉

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン