この2年間、いつも仲良く4人で本誌連載やテレビに登場していた蟹江ぎんさん(享年108)の娘4姉妹。しかし秋以降、“あんねぇ”こと長女・年子さん(99才)はめっきり姿を見せなくなり、イベントにも3人だけが出演するようになっていた。いったい、何があったのか。複雑な家族の事情と胸の内を姉妹たちが明かしてくれた。
「9月の半ばに、“あんねぇ”の顔、見にいったけど、その後、どうしているだか」
四女・百合子さん(92才)がそう言い出して、その日、3姉妹は3か月ぶりに、蟹江家から車で30分ほどの距離にあるデイサービスの施設を訪ねることになった。
ちょうどロビーで、仲間たちと談笑していた年子さん。3姉妹の足音を感じて、ふと目を留めるや、
「あれぇーっ、わーざわざ来てくれたんかぁ」
と、すっとんきょうな声を上げた。そして、杖もつかずに両手を広げて、3姉妹のもとに歩み寄った。ブルーの洋服に身を包んだ年子さんは、見た目はとても健康そうだ。3姉妹は心から安堵した。
五女・美根代さん(90才):「もしかしたら、ボーッとしているんじゃないかと心配になったが、えらい元気だがねぇ」
年子さん:「ここには、私より若い人ばっかり。いや、若いちゅうても、80をとうに越した人ばっかしだけど、そういう人に囲まれてると、自然とにゃあ、若返るだが(笑い)」
百合子さん:「いやぁ、ほんと白かった髪の毛も、ずいぶんと黒々としてきたにゃあ」
毎朝、9時半にやってきて、送迎のバスで年子さんが自宅に帰るのは、夕方の5時ごろ。
年子さん:「みんなでゲームをしたり、カラオケを歌ったり…、お昼ごはんも出るし、お風呂にもいれてもらえる。もう、ここは極楽、いや天国だがね」
美根代さん:「そんなら、“あんねぇ”は、デイサービスにハマってしまったということだがね、ハハハハ」
年子さん:「そう、年がいもなく、ハマってしもうた(笑い)」
年子さんが、体を揺するようにして笑う。
だが、その笑顔と対照的に、三女・千多代さん(95才)は、なぜだか“つくり笑い”になっていた。いつもは、持ち前のサービス精神で、口数の多い千多代さんが、ほとんど口を開かず悄然としている。
(“あんねぇ”は、ここが天国だと言ってるけど、あれは、私らを安心させるための強がりじゃないだろか。これ以上、迷惑をかけられんという、その思いで、精一杯元気にふるまってるのかもしれん)
千多代さんには、どうにもそう思えてならなかった。“あんねぇ”と共に暮らした10年余りという歳月を経て、千多代さんのなかに、“あんねぇ”のことを、親のごとく心配する思いが、いつのころからか醸成されたのだった。
(いや、私が…、“あんねぇ”を追い出してしまったんだろうかぁ。ほんとは、もういっぺん、私と一緒に暮らしたいと思うとると違うやろかぁ)
快活そうにしゃべる年子さんを、じっと見つめる千多代さん。複雑な感情が胸に押し寄せ、泣き出したい衝動にかられて仕方がなかった。
※女性セブン2014年1月9・16日号