国内

ダボス会議失言の安倍首相 ウォールストリートでの前科あり

 安倍晋三首相は1月にスイスで開かれたダボス会議での外国記者との懇談会(首相自身が実名報道を了承)で、現在の日中関係に関連して「今年は第一次世界大戦から100年目であってですね、イギリスもドイツも経済的には依存度が高かった最大の貿易相手国だったが戦争が起こった」と発言して世界中で大騒ぎになった。

 多くのメディアでは、「日中も英独のように戦争になる可能性がある」という認識として驚きをもって伝えられたからである。国家の代表者がこんな発言をするはずがない、というのが世界の常識である。

 安倍氏は前段で「偶発的な衝突が起こらないようにしていくことが私は重要だと思っています」と言っているから、政府・与党の幹部たちが「悪意ある報道だ」「真意を誤解された」と反発したのは心情的にはわかる。また、通訳が「我々(日中)も似たような状況にある」という言葉を補ったことが誤解を生んだという指摘もある。

 しかし前後の発言を見れば、中国も経済成長は必要だから日本と武力衝突したら大変だとわかっている→大切なのは衝突を起こさないこと→しかし英独も衝突は起きた→コミュニケーション・チャンネルを作るべきだ、という文脈である。

 通訳の補足は発言主旨から外れていないだろう。

 安倍氏には“前科”もある。昨年渡米した際に現地メディアに「靖国神社とアーリントン墓地は同じ」と述べて反発を受けたことだ。日本のメディアは無視したが、少なくとも米インテリ層は今でもこの発言をよく話題にするし、今回の件が「やはりアベは危険なタカ派」と報じられた背景には上記発言が影響している。

 安倍氏には、諸外国の歴史や国民感情に疎いのに生半可な知識を披露したがる軽薄さがある。ウォールストリートで講演し、悪名高きゴードン・ゲッコー(映画「ウォール街」の主人公で金の亡者として描かれる)に日本経済をたとえて「ゲッコーのように日本もカムバックする」と得意顔で語ったのも同じように恥ずかしくて馬鹿らしい。

※SAPIO2014年3月号

関連キーワード

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン