国際情報

韓国によるベトナム派兵 軍事独裁体制を維持するためだった

 1964年、韓国はアメリカ政府からの要請を受けベトナム戦争への派兵を決定。1964年から1973年までに延べ32万人を派兵した。

 なぜそこまで韓国はベトナム戦争に深く関わる必要があったのか。それを読み解くには、当時の韓国社会の状況を知る必要がある。

 朴槿恵・現大統領の父・朴正熙(パク・チョンヒ)氏が陸軍少将の地位で軍事クーデターを起こし、韓国大統領に就任したのは、ベトナム派兵決定の前年だった。軍事独裁体制を敷く朴大統領の権力基盤はもちろん軍隊。だが当時、アメリカは韓国軍の兵力を削減する計画を進めていた。韓国人ジャーナリストが説明する。

「朝鮮戦争の休戦協定を受けて1954年、共産圏である北朝鮮や中国の脅威から韓国を守るため、アメリカが韓国軍の軍事費をサポートすることになった。しかし、それから10年ほど経つとアメリカは韓国軍維持に巨額の財政支出を続けることに難色を示し始める。そして、米政府は韓国軍と在韓米軍を合わせて計25万人を削減する案を韓国に提示した。

 それに対し、自らの権力基盤が弱体化すると思った朴大統領が焦った。そこで朴氏は“対反共戦争”への参加、つまりベトナムへの大軍派兵に踏みきって、軍の温存に成功した」

 さらに朴氏は、派兵の見返りとしてアメリカからの軍事装備の提供や訓練費のアメリカ負担など、安全保障を強化する支援も得た。実際、軍事援助額はベトナム戦争中に大幅に増加。それまで2億ドル未満だった軍事援助額は1968年に3.8億ドル、1969年には4.8億ドルにまで膨れあがった。派兵の理由はそれだけではない。

「1965年の日韓協定締結を控えて大規模な反政府デモが起きるなど、政権批判が強まっていた。そこで国外のトピックに国民の目を逸らせる必要があった。いずれにせよ、派兵は朴大統領の軍事独裁体制を維持するための手段だった」(同前)

※週刊ポスト2014年4月4・11日号

関連記事

トピックス

《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
《悠仁さま成年式》雅子さまが魅せたオールホワイトコーデ、 夜はゴールドのセットアップ 愛子さまは可愛らしいペールピンクをチョイス
NEWSポストセブン
LUNA SEA・真矢
と元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《80歳になる金婚式までがんばってほしい》脳腫瘍公表のLUNA SEA・真矢へ愛妻・元モー娘。石黒彩の願い「妻へのプレゼントにウェディングドレスで銀婚式」
NEWSポストセブン
昨年10月の総裁選で石破首相と一騎打ちとなった高市早苗氏(時事通信フォト)
「高市早苗氏という“最後の切り札”を出すか、小泉進次郎氏で“延命”するか…」フィフィ氏が分析する総裁選の“ウラの争点”【石破茂首相が辞任表明】
NEWSポストセブン
万博で身につけた”天然うるし珠イヤリング“(2025年8月23日、撮影/JMPA)
《“佳子さま売れ”のなぜ?》2990円ニット、5500円イヤリング…プチプラで華やかに見せるファッションリーダーぶり
NEWSポストセブン
次の首相の後任はどうなるのか(時事通信フォト)
《自民党総裁有力候補に党内から不安》高市早苗氏は「右過ぎて参政党と連立なんてことも言い出しかねない」、小泉進次郎氏は「中身の薄さはいかんともしがたい」の評
NEWSポストセブン
阪神の中野拓夢(時事通信フォト)
《阪神優勝の立役者》選手会長・中野拓夢を献身的に支える“3歳年上のインスタグラマー妻”が貫く「徹底した配慮」
NEWSポストセブン
9年の濃厚な女優人生を駆け抜けた夏目雅子さん(撮影/田川清美)
《没後40年・夏目雅子さんを偲ぶ》永遠の「原石」として記憶に刻まれた女優 『瀬戸内少年野球団』での天真爛漫さは「技巧では決して表現できない境地」
週刊ポスト
朝比ライオさん
《マルチ2世家族の壮絶な実態》「母は姉の制服を切り刻み…」「包丁を手に『アンタを殺して私も死ぬ』と」京大合格も就職も母の“アップへの成果報告”に利用された
NEWSポストセブン
チームには多くの不安材料が
《大谷翔平のポストシーズンに不安材料》ドジャースで深刻な「セットアッパー&クローザー不足」、大谷をクローザーで起用するプランもあるか
週刊ポスト
ブリトニー・スピアーズ(時事通信フォト)
《ブリトニー・スピアーズの現在》“スケ感がスゴい”レオタード姿を公開…腰をくねらせ胸元をさすって踊る様子に「誰か助けてあげられないか?」とファンが心配 
NEWSポストセブン
政権の命運を握る存在に(時事通信フォト)
《岸田文雄・前首相の奸計》「加藤の乱」から学んだ倒閣運動 石破降ろしの汚れ役は旧安倍派や麻生派にやらせ、自らはキャスティングボートを握った
週刊ポスト
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン