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ベネッセ新社長の原田泳幸氏を「天才には程遠い」と大前氏

 年度があらたまる春は人事異動の季節だが、様々な会社の社長交代ニュースが数多く飛び交う時期でもある。多くは新社長に期待するという論調だが、ベネッセホールディングスの代表取締役会長兼社長に就任した原田泳幸氏など、異業種、他社から抜擢された新リーダーは、本当に手放しで持てはやすべき人事なのかと大前氏が疑問を投げ掛けている。

 * * *
 ベネッセホールディングス、武田薬品工業、ローソンなど日本企業の社長交代がマスコミで話題になっている。その多くは、業界や企業をまたいで登用された新たなリーダーの抜擢を持て囃(はや)す論調だが、私はこれらのトップ人事には大いに疑問を持っている。

 まず、ベネッセは社外取締役を務める日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸会長を6月21日付で会長兼社長に迎え、福島保社長は代表権のある副会長に、福武總一郎会長は最高顧問に退くという。しかし、なぜ原田氏なのか?

 原田氏は、アップルコンピュータジャパン社長から日本マクドナルドのCEO(最高経営責任者)になって8期連続で既存店売上高を伸ばし、経済メディアなどでは“天才経営者”との呼び声も高い人物である。

 だが、そもそも事業の将来を見通せる優れた経営者であれば、iPhoneやiPadの世界的ヒットにより爆発的な成長をしていくことになるアップルを離れ、競争激化が予想された日本のハンバーガー業界に身を投じた理由がわからない。

 実際、原田会長は外食産業の激変・多様化という構造変化を見誤り、基本的な味や商品のイノベーションをほとんどしてこなかった。そうした過去の経営を見ても、“天才”と呼ぶには程遠いと言わざるをえない。

 そして、業績が2期連続の減収減益と低迷した後、事業会社の社長職に続いて持ち株会社の社長職も退かざるをえなくなると、今度は異業種からのヘッドハンティングに応じる意思を明確にアピールした。

 その発言にベネッセの福武会長が飛びついたようだが、「進研ゼミ」などの教育事業や老人介護事業などを展開しているベネッセは、確固とした企業理念と人間的な温もりが必要な会社だ。

 それに対して原田氏は、コストダウンや価格戦略を重視するアメリカ型の経営者であり、日本マクドナルド創業者の藤田田氏が亡くなった時に社葬どころか会社として偲ぶ会さえ営まなかった人物だ。そういう合理的思考の経営者がベネッセの適切な舵取りと変革を担うのは極めて難しいだろう。

※週刊ポスト2014年5月2日号

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