国際情報

「南北朝鮮と東西ドイツの統一は次元の違う話」と専門家指摘

 今年に入り、韓国で「南北統一」議論が盛んになっている。朴槿恵大統領は「統一は『テバク』(大当たり)です。統一で韓国経済は大飛躍する」と経済メリットを声高に叫ぶが、現実はそう甘くない。

 韓国では東西ドイツ統一を例に夢を描くが、世界有数の経済大国だった西ドイツですら、統一後しばらくは多くの企業が倒産し景気低迷に悩まされた。韓国のシンクタンク「現代経済研究院」推計によれば2013年の韓国の1人当たりGDPは2万3838ドルで、北は854ドルと約28倍の格差がある。亜細亜大学アジア研究所教授の奥田聡氏は「南北朝鮮と東西ドイツの統一はまったく次元の違う話」とした上で次のように語る。
 
「東ドイツは北朝鮮のような貧困国ではありませんでしたし、人口も西ドイツの4分の1と少なかった。通貨統合時のレートを1対1としたため西ドイツは経済的にかなり厳しい状況となりましたが、マルクが暴落することはなかった。アウトバーンをはじめインフラも整備されていたので大混乱はありませんでした」

 しかし、韓国には自国人口(約5000万人)の2分の1に当たる北の人民を抱え込む経済的余裕は到底ない。

「統一後、北の1人当たりGDPを韓国の半分程度まで引き上げるとすれば必要となる資本投資額は約5200億ドル(53兆円)。そのうち、政府による手当てが必要となる公的資本(鉄道や道路、港湾などのインフラ)だけでも約2600億ドルになります。このほかに私的資本(住居や自動車、企業の建物、機械など)の投下も必要になります」(奥田氏)

 韓国の2014年度国家予算はおよそ356兆ウォン(約33兆円)だから、北を吸収統一した場合の経済リスクは計り知れない。

「数十万から100万単位の難民が流入すれば、韓国の貧困層に多大なインパクトを与えます。清掃や廃品回収などの低賃金労働を北の難民に取られ、街に失業者が溢れるでしょう。治安は悪化し、観光客も寄り付かなくなります。

 さらに社会福祉や失業対策のほか、景気対策などの財政出動も必要となるので、韓国が単独で統一コストを負担するのは不可能。国際社会の援助がなければ韓国の財政はたちまち危機に直面するはずです」(奥田氏)

※SAPIO2014年5月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン