一方、小泉内閣で内閣官房副長官補として自衛隊のイラク派遣を担当した安全保障法制のプロ、柳澤協二・国際地政学研究所理事長は「護衛の必要はない」という。
「1997年に結ばれた日米防衛協力ガイドラインは、“わが国の近隣で有事が発生した際の米艦護衛はしなくてもいい”という前提でつくられています。にもかかわらず、自衛隊が米軍の艦船や爆撃機の護衛をすれば、北朝鮮から“参戦した”とみなされ、攻撃されるリスクが高まります」
集団的自衛権がなければ、朝鮮半島有事に参加できず、北朝鮮は日本を攻撃する大義名分がない。だが、集団的自衛権を行使し、米軍に協力すれば日本はれっきとした戦争当事国となり、北朝鮮が“敵国”である日本にミサイルを撃ち込んでくる可能性は高くなる。
そうなれば、韓国国民を守るために、米韓軍を支援する自衛隊員にも、北のミサイル攻撃を受ける日本の一般市民にも、多くの犠牲者が出る可能性が高い。日米同盟というより事実上の日韓軍事同盟だが、果たして、現在の韓国との間に日本がそれだけの犠牲を払ってまで戦争に参加しなければならない信頼関係があるだろうか。
※週刊ポスト2014年6月6日号