いま東京都心部のホテル業界は<第三次ホテル戦争><2014年問題>とも呼ばれる開業ラッシュに沸いている。その主役は6月11日にオープンした虎ノ門ヒルズ内の「アンダーズ東京」(米ハイアットグループ)に代表される外資系だ。
外資系ホテルの日本進出が目立ち始めたのは1990年代から。1992年に開業した「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」をはじめ、「パークハイアット東京」、「ウェスティンホテル東京」の3ホテルが「帝国/オークラ/ニューオータニ」の国内勢に代わって“新御三家”と称された。
2000年代に入ると、「マンダリン・オリエンタルホテル東京」、「ザ・ペニンシュラ東京」、「ザ・リッツ・カールトン東京」が相次いで東京都心部の一等地に進出してきたことで、高級ホテル間の競争がますます激化。ラグジュアリー感たっぷりの“新新御三家”と持てはやされた。
そして、昨年の終わりから今年にかけても外資系ラグジュアリーホテルが立て続けにオープン。「東京マリオットホテル」、前出のアンダーズ、年内には千代田区大手町の新複合タワー内にシンガポール資本の「アマンリゾーツ」が登場する予定だ。
ここまで外資系ホテルが東京を”占領”しているのはなぜか。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が語る。
「都心部の再開発でホテルが入居しやすい超高層ビルが次々と誕生していることに加え、2020年の東京五輪が決まり、インバウンド(訪日外国人客)需要の高まりを見越しているからです。もちろん、景気回復により国内富裕層の囲い込みも狙っています。
外資系ホテルの特徴は、スタンダードタイプの部屋でも外国人の体格に合わせてベッドやバスルームが広く、平均的な客室面積も約50平方メートルあること。国内の旧御三家も外資系に対抗してリニューアルをしていますが、客室面積までは広げられず、30平方メートルと水をあけられている状況です」(瀧澤氏)
いくら広々した豪華な客室とはいえ、外資系ホテルには“宿泊料金が高すぎる”というイメージがつきまとい、別世界の空間だと思っている人も多いはず。事実、虎ノ門ヒルズ・アンダーズ東京のスタンダードルームの宿泊料金は、1泊6万円前後からと高額設定になっている。
だが、敬遠するのはまだ早い。前出の瀧澤氏は「正規料金と実勢料金は違う」と説明する。
「新規開業時に出されている客室料金は、話題となって利用者も多いことから“ご祝儀相場”的な高額設定になっています。開業前後には宿泊料金を下げないと発信していても、しばらくして閑散期日になるとディスカウントしたプランを出してくるのが実情。よって、ホテルの実力は“閑散期日の実勢料金”であるともいえるのです」