「日本の包丁が海外で人気になったきっかけは、1995年イギリスの商品テスト・レビュー雑誌『Which?』で、日本の包丁の切れ味の良さが紹介されたことです。特に高品質な商品がテストに使われたわけではありませんが、日本の包丁は基本的に欧米で売られているものよりも、切れ味が良いんですよ。
包丁の文化は料理の文化でもあります。日本では刺身を薄く切る、キャベツを千切りするなど、一般家庭でも繊細な作業をする料理文化があることが、日本の包丁が優れている理由のひとつに挙げられます。鋭い切れ味にするには刃を薄く仕上げる技術を要しますし、一方で薄く仕上げた刃には、欠けやすいというデメリットもあります。欧米のメーカーの場合は、どのような食文化を持つ人々が使用しても、欠けることのない仕上げに留めていますし、硬くて長期間切れ味が衰えない永切れすることよりも、研ぎやすい粘り――柔らかさを鋼に求める傾向があります。
最近では和食がユネスコ無形文化遺産になって、海外での和食ブームがさらに盛り上がり、日本の料理人たちが海外へ進出する機会が増えました。そうした人たちは、こだわりの道具として使い慣れた包丁を持って行き、現地の料理人との交流の中で『ちょっと使わせてみて』などのやり取りから、プロの間で日本の包丁人気が高まり、それが一般の人にも波及しているようです」(鎌田さん)
店内には商品だけでなく研ぎや加工スペースがあり、同店で購入した商品なら、その場でカタカナか漢字の名入れも無料でしてくれる。家族や友人へのお土産に、1人で何本も購入する観光客や、日本での勤務を終えて帰国する長期滞在の人が何十本も、注文するケースもあるという。ちなみに外国人名の名入れについて、カタカナであれば問題ないが、漢字の当て字をどうするかに時間がかかるケースがあり、混んでいる際はすぐに対応することが難しいため、事前に“どの漢字を充てるか”を決めて行くのがオススメだ。