スポーツ

金田正一 「巨人V9の発端はワシの移籍。異論はないだろう」

 日本は高度成長に沸いていたあの頃、巨人は本当に強かった。川上哲治監督の下、長嶋茂雄・王貞治(ON)という不世出のスター2人を中心に、球史に輝くV9は、400勝投手“カネやん”こと金田正一氏(80)が巨人に移籍した1965年から始まった。金田氏に、当時の思い出を語ってもらった。

 * * *
 V9の発端は金田の移籍。これに異論を唱える者はいないだろう。

 巷ではもっぱら、この移籍はワシが巨人に行きたかったから実現したといわれとる。確かにそれも事実だ。(ワシがその前に所属していた)国鉄(スワローズ)の試合はいつも閑古鳥が鳴いていたから、満員の客には憧れたし、ONをバックに投げてみたい夢があったからな。しかしそれ以上に、川上さんがワシを欲しがっていたというのが真相だ。

 1964年、ワシは球団の身売りが決まっていた国鉄に嫌気が差し、「10年選手制度」(※注)を使った移籍を考えていた。この制度では、移籍交渉は前シーズンの順位によるウェーバー方式で行なわれる。この年は阪神が優勝し、大洋、巨人、広島、国鉄、中日の順だったから、最初の交渉相手は中日だった。品川プリンスホテルでの交渉で、中日は移籍金1億円と、引退後の監督就任という破格の条件を出してきた。

 しかし今だからいうが、実はこの時点ですでに巨人との話はできていたんだ。川上さんが一番恐れていたのが、ワシが中日へ行くことだった。巨人キラーの金田(当時対巨人戦通算65勝)が生まれ故郷のチームであり、かつ親会社同士が苛烈な新聞販売競争をしている中日に入る。そうなれば星計算が少なくとも8勝分は違ってきて、巨人も川上さんもジ・エンドだったからね。

【※注】現在のFA制度の前身ともいえるもので、同一球団で10年以上在籍したA級選手には、残留してボーナスを得るか、自由に移籍する権利が与えられていた。3年後にはB級選手として移籍権が再取得できる。金田はB級選手の資格があった。

※週刊ポスト2014年8月8日号

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン