春先には冷夏との予報もあったが、今年の夏も暑い。ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が、夏バテを防止する食事について紹介する。
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今年の夏も猛暑が続いている。天候不順で集中豪雨などの被害を受けた方も多かったと思う。高温多湿のわが国では、どうしても夏バテ気味になりがちだ。そこで、今回は夏バテ防止食をいくつか考えてみた。
●食欲が落ちたときは香辛料を上手に使う
わが家では、夏の日曜日の夕食は、スープカレーが定番となっている。市販のスープカレーを使い、これに大量の野菜を電子レンジでチンしてかきまぜるだけだから簡単だ。食欲のないときは、ご飯はなし。そのほか、しょうが、わさび、コショウ、ネギ、唐辛子などを上手に使うといい。薬味は名前の通り薬の作用がある。それらのおかげで血管が拡張して汗が噴きだし、疲労感が取れる。
こういった薬味と香辛料は、アディポネクチンという物質を分泌してくれる。夏は意外に脳梗塞になる人が多い。アディポネクチンというのは、内臓脂肪から分泌されるたんぱく質で、血管の内側にできた傷を修復する作用があり、動脈硬化を予防してくれる。
●クエン酸が疲労回復に有効
レモンやグレープフルーツ、梅干しなどに入っているのがクエン酸。乳酸を排出する働きがある。僕は市販のシトラックスという高濃度クエン酸飲料に牛乳を入れて毎日飲んでいる。午後3時頃になると特に疲労がたまってくるので、それを飲む。味は飲むヨーグルトに近い。
疲労の原因は乳酸である。そんなときにクエン酸を体内に入れると、この乳酸がクエン酸回路の中で他の物質に変わり、疲労感がなくなる。また酢にもクエン酸は入っているので、冷やし中華なども効果的だ。
●不足しがちなビタミンB1を積極的に摂ろう
夏場はビタミンB1の消耗が激しくなる時期。ビタミンB1が不足すると、摂取された栄養をエネルギーに変換しにくくなるので、体脂肪も増えてしまう。
豚肉、うなぎがB1の代表選手。昨今はうなぎの値段が高騰しているが、疲労回復のためにはやはりおすすめだ。豚肉はニンニクやニラ、玉ねぎなどと一緒に摂るとさらに吸収がよくなる。暑い、だるい、食欲がないという夏バテは、こういった方法で治せる。
※週刊ポスト2014年8月29日号