「権力中枢とも近く金ロイヤルファミリーの内部を知りすぎてしまった、病気を患っており精神状態が不安定、などと様々な説がある。めぐみさんの生存情報については、日本政府の一部にも同様の情報を伝えているはずです」
ただし、こうした情報が日本政府から発せられることはまずない。世論への影響が大きい拉致問題の担当者には、厳しい箝口令が敷かれている。特に、めぐみさんに関する情報は極秘事項だ。大手マスコミも慎重にならざるをえない。
だが、蓮池薫氏の兄、透氏はこう言う。
「被害者家族の感情に配慮するあまり被害者を語る際に一種のタブーができてしまっているのは事実。生存情報はもちろん、『もし死んでたらどうするのか』といった想定さえも許されなくなっていることが、状況の膠着を招いてしまっているのではないか」
こうして日本のマスコミがめぐみさんの生死情報をタブー化し、報じていない状況を北朝鮮側は最大限利用している。大手紙外信部記者の話。
「今年3月、(めぐみさんの長女である)ウンギョンさんと横田夫妻を面会させ、拉致交渉の地ならしをしたのには、北のしたたかさを感じました。日本政府は横田夫妻の年齢的限界を考慮したとはいえ、夫妻と『(めぐみさんの)遺骨は本物』と主張してきたウンギョンさんを会わすことは、『もう、めぐみさんのことは掘り返すな』という北のメッセージを半ば受け入れてしまった形になりかねないのです」
拉致交渉は本格化したばかりだ。日本のマスコミはめぐみさんの情報をタブー視することなく伝えていく必要がある。北朝鮮に一切のごまかしを許さぬ姿勢こそが拉致問題解決をもたらすはずだ。
※SAPIO2014年9月号