国内

痴漢冤罪「名刺渡し去る」「とにかく逃げる」は本当に有効か

 三鷹市のある男性中学教諭は2011年12月、バスに乗車中、女子高生の臀部を触ったとして逮捕、起訴された。男性は「右手で携帯電話を操作し、左手で吊り革を持っていた」と無罪を主張。その様子が車載カメラに残り、手からも女子高生のスカートの繊維片は検出されなかった。

 ところが、一審は有罪。判決は女子高生の供述を重視し、「揺れるバスの車中、右手で携帯電話を操作しながら左手で痴漢することは、著しく困難とまではいえない」として、罰金40万円を言い渡したのだ。証拠がなくとも“推定有罪”というわけである。

 男性は控訴。今年7月、車載カメラの映像の検証がより詳細に行なわれたことや、女子高生側の主張に信憑性が欠けるとの東京高裁の判断から逆転無罪を勝ち取った。だが逮捕から3年近くも濡れ衣を着せられ、その間、休職を余儀なくされた。

「警察官はきちんと捜査するはず」「司法は正しく判断してくれるはず」というのは幻想にすぎない。

 女性に「触られた!」と声をあげられた時の対処法として、「名刺を渡してその場を立ち去る」「駅事務所に連れていかれる前にとにかく逃げる」などのテクニックを耳にしたことのある読者もいるだろう。

 だが結論からいえば、そうした対処法はもはや通用しなくなりつつある。

 刑事訴訟法第217条では「30万円以下の罰金」など軽微な犯罪の場合、住所や氏名が明らかでない場合や逃亡の恐れがある場合のみ現行犯逮捕できると規定されている。それが名刺を渡して逃亡の恐れがないことを示せばいいという説の根拠だ。

 たしかに一昔前まではそれが通用するケースもあったが、現在の東京都迷惑防止条例第5条では、痴漢は「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に引き上げられている(2001年までは「5万円以下」だった)。

 同条例を根拠に駅員が「名刺を出しても帰れませんよ」といって無理やり駅事務所に連れていこうとするケースが増えている。

 かといって「逃げる」のはリスクが大きすぎる。逃げれば自分が犯人だといっているようなものだし、防犯カメラによって特定され後日逮捕されることにもなりかねないからだ。

※週刊ポスト2014年10月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン