毒蝮三太夫「神様の割にお布施が少ないよ(笑)」


――女性より男性のほうが心配ですか?

毒蝮:女の人は年をとってもジャニーズのアイドルが好きだったり韓流に夢中になったりする。でも、年寄りで夫婦そろって旅行に行く人より女友達と行く人が多いだろう? 男は気をつけないと置いていかれるんだよ。

 昔は演劇だって男も見に行ったんだよ。新国劇なんて客は男が多かった。でもいま劇場へ行くと女性のほうが圧倒的に多い。男にも碁会所や釣堀とか、近場で集まるところがあったけれど、最近はないね。男は、奥さんと一緒にいるのを嫌がられない、魅力を絶やさない努力をしないと。

――どんな努力が必要ですか?

毒蝮:まず、人の顔を見ないといけない。人の顔を見ないということは、人の顔色が分からないということ。この人は機嫌がいいのか、悪いのか。自分にとって味方なのか嫌な人なのかということも分からない。非常に怖いよ。本当のコミュニケーションがとれていないから、戦争はないけれどいさかいは多い世の中になっている。人の顔を見て、素直に、はっきりとものをいうような自分を作っていかないと。

――SNSなどで常に繋がっていたり、絆が重視される風潮ではありますが、逆の傾向が強いから強調されているんですね。

毒蝮:ネットなんて、やりすぎないほうがいい。顔が見えないから、人を罵倒したり誹謗したり平気になって喧嘩になる。俺だって、本音だけでは生きてないよ。素直さがベースにあるけれど、相手を見ながら本音に近い「もどき」でやってるんだよ。人間社会なんて、本音だけじゃ生きられない。最初は作り笑いでもいいんだよ。商人とかホステスなんて作り笑い(笑)。それでも、悪い気はしないんだからさ。

――表情が豊か、笑顔であることは生きる上で大事なんですね

毒蝮:シェイクスピアの『お気に召すまま』に『人生は舞台。人はみな役者』というセリフがあるけれど、この人生という大きな舞台で、いかに自分が名優として生きられるかだと思う。俺はやっぱり、毒蝮三太夫という役を演じているんだよ。主婦は主婦という役を、ラッパーはラッパーという役を、国会議員は国会議員という役をいかにうまく演じ、人に喜ばれるかが大事。最近はそういう名優が少ないよね。

 名優になるというのは大勢の人気者になることと同じ意味じゃないと思ってるよ。単に1000人の傍観者よりも、10人でも深く正しく理解した人と俺は話をしたい。だから、俺のことを面白がってくれる人たちがつくる音楽に参加した。まだ30代だという彼らに「真似できません。神ですよ!」なんて言われたけれど、神様の割にお布施が少ないんだよ(笑)。

――どうすれば、面白く魅力的な年の取り方ができるのでしょうか?

毒蝮:まじめすぎる人間だと偏るから、規則正しい不摂生がいいよ。無駄なことの楽しさを知れということだな。でも、ムダばっかりでもダメなんだよ。人生はバランスだよ。

●毒蝮三太夫(どくまむし さんだゆう)本名・石井伊吉。1936年生まれ。東京出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。1938年に12歳で舞台デビューし、映画やドラマに出演。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』では地球を守る隊員として子どもたちの人気者に。1968年に現在の芸名に改名。2014年12月発売の『ENAK DEALER』(DJ JET BARON)収録曲「おもしろおじさん feat. CHOP STICK, 丸省 and 毒蝮三太夫」で18年ぶりに音楽活動に参加。1969年10月から続くTBSラジオ『ミュージックプレゼント』のパーソナリティは46年目を迎えた。

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