それに対し、『花燃ゆ』の制作発表はさらに遅く2013年12月3日だった。他の年より数か月~半年も遅れたのはなぜなのか。
 
 筆者が『花燃ゆ』制作発表直後(2013年12月)に舞台となる山口県萩市を取材すると、さらに奇妙な経緯が浮き彫りになった。当時、萩市の商工観光部観光課課長はこう証言した。
 
「NHKのチーフ・プロデューサーがこちらに来たのは9月のことです。脚本家2人を連れて、『山口県に何か大河ドラマの題材がありませんか』などと聞かれ、市内の案内も頼まれました」
 
 例年なら制作発表が終わっている時期にもかかわらず、題材も主人公も未定。しかも舞台となる「場所」だけが決まっていたような言い方だ。
 
「最初男性の主人公候補を提案したが、NHK側からは『女性で誰かいないか』といわれ、伊藤博文夫人などの話をしました。その後、10月になって『吉田松陰ではどうか』と聞かれ、妻や3人の妹について説明した。『女性でいろいろ面白い話がありますね』という反応でしたね。まさか2015年の放送とは思わず、もっと先の大河のリサーチかと思っていました」(同前)
 
 2009年放送『天地人』のチーフ・プロデューサーは雑誌インタビューに〈2006年あたりからこの大河ドラマ48作目の題材を考えはじめていたのですが、当初、局内で「直江兼続でいきたい」と話したとき、みんな知らないわけですよ〉(『時代劇マガジン』2009年1月号)と答えていることからもわかるように、放送の数年前から作品の構想が立てられることも通例で、「主人公を誰にするか」は最重要視されるといわれてきた。

「舞台は山口県であること」が重視された形跡がある『花燃ゆ』は不自然きわまりない。それも、安倍政権発足直後に決まった方針と推測され、それ以外に「山口」である必要性は見当たらないのである。

●取材・文/鵜飼克郎(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2015年1月30日号

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
東条英機・陸軍大将(時事通信フォト)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最低の軍人」ランキング ワースト1位はインパール作戦を強行した牟田口廉也・陸軍中将 東条英機・陸軍大将が2位に
週刊ポスト
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト