その前身「イラク・大シリア・イスラム国(ISIS)」は、「メソポタミアのアルカーイダ」(2004年~)に源流を持つ「イラク・イスラム国」(2006年)が発展してでき、フロント組織「ヌスラ戦線」をシリア国内に作った。
ラッカやシリア東部の50万都市デレゾール、北部アレッポ近郊アザーズを次々に制圧し、ヌスラ戦線はシリア、イスラム国はイラクに専念するよう指示したアルカーイダ指導者ザワヒリと絶縁して以降、シリア東部からイラク北西部にかけ広範な支配地域を獲得。
「当時、大小3000もの武装勢力が乱立したシリアで、なぜイスラム国だけが快進撃を続けられたのか。要するに彼らには資金源があり、その武器や資金供与が誰のどんな意図によるものか、背後関係を一つ一つ読み解くことが重要です」
以下、イスラム国が敵対する勢力を整理すれば、(1)イラク政府軍(2)シリア政府軍(3)「自由シリア軍」等の反体制派武装組織(4)クルド人民防衛部隊や自治政府軍「ペシュメルガ」(5)アメリカ、フランス、サウジなど計12か国が参加する有志連合軍となる。が、シリアに数百あると言われる反体制派組織とイスラム国が交戦する状況は、政権側にすれば〈悪くない展開〉と言え、〈イスラム国の掃討の優先順位〉は必ずしも高くない。
「一方、アサド政権と敵対する欧米及びアラブ諸国も、シリアでは穏健派とされる反体制派を支援せざるをえず、彼らに供与した最新兵器を敗走するたびに奪われ、敵の戦力を却って高める皮肉な事態も起きたのです」
また、その管理資金は5億ドルとも言われ、支配地域の70か所の油田や異教徒に課す〈人頭税〉の税収や寄付、年間40億~51億円に上る〈身代金〉も主な収入源だ。