国内

安倍首相は一体どのようにしてイスラム国に罪を償わせるのか

 イスラム国の邦人人質殺害事件について、安倍首相は「罪を償わせる」と強い言葉でこれを非難した。しかし、落合信彦氏は「どうやって罪を償わせるのか?」と、安倍首相の発言に懐疑的だ。落合氏がその理由を解説する。

 * * *
 自国民が海外で殺害された場合、国家はその国民が誰であれ、「遺体を返還せよ」と要求しなければならない。もちろん、戦争などの局面において遺体が返されないことはあるが、それでもそのことをはっきりと公に表明することが、国家としての最低限の責務である。

 人質殺害後、安倍晋三が、あるいは政権の幹部らが、はっきりと遺体の引き渡しについて言明したことがあっただろうか。この国の政治家は、そんな最低限の責務すら放棄している。

 安倍は中東に行く前に側近たちに止められていたという。しかし、彼らの反対を振り切ってエジプトで「カネを出す」と宣言した。それがISIL(Islamic State in Iraq and the Levant)に火をつけて人質殺害につながったのだ。

 だが、その後の安倍からは人質を救出できなかったことへの自責の念や反省の色は全く感じられない。それどころか、高揚した様子で「(ISILに)罪を償わせる」などと断言し、自分の言葉に酔いしれている始末である。自ら人質を奪い返すこともできない国で、どうやって「罪を償わせる」ことなどできるのだろうか。

 結局、安倍は口ばかりで、それはアメリカのオバマにも似ている。オバマも一見、ISILに対して威勢のいい言葉を並べているが、実際には軍事予算を増やしたと言っても、ISIL相手に35億ドル程度では、とうてい壊滅などできない。また、オバマは地上戦をやるかどうかなど、肝心なことははっきりしない。曖昧なままなのだ。

 ISILという狂信者たちがイラクやシリアで暴れている第一の理由は、2011年、オバマがまだヨロヨロ歩きのイラクからアメリカ軍を撤退させたことだ。トップのオバマがこんな調子だから、米軍も事態は長引くと想定している。デンプシー統合参謀本部議長は、昨年11月の段階で、すでに「3~4年の長期戦になる」との見通しを示していた。

 予算のないアメリカは、当然、日本に「同盟国としてカネを出せ」と要求してくる。結局、「罪を償わせる」と言いながら兵士を出せない日本は、アメリカの軍事予算を肩代わりさせられることになるかもしれない。それが今後、何年も続くことになるのだ。日本の経済は、大打撃を被るだろう。

※SAPIO2015年4月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
国仲涼子が『ちゅらさん』出演当時の思い出を振り返る
国仲涼子が語る“田中好子さんの思い出”と“相撲への愛” 『ちゅらさん』母娘の絆から始まった相撲部屋通い「体があたる時の音がたまらない」
週刊ポスト
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン