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ソウルの道路陥没が年間854件の惨状 市は日本企業を頼った

 停車したバスから降りたカップルが歩道を歩き始めたら……ドスン! いきなり道路が陥没し、2人はあっという間に地中へ消えた。韓国・ソウル中心街の龍山(ヨンサン)駅近くで2月20日に発生した道路陥没事故の瞬間を捉えた映像だ。
 
 彼の国では近年道路陥没が急増している。ソウルだけで2013年は854件を数える。一方、東京都では「都道での陥没は年間5件程度」(建設局道路管理部)だという。惨状の中でソウル市が頼ったのは日本企業だった。
 
 道路陥没の原因は地下鉄や下水道など地下構造物の老朽化に伴ってその周辺に空洞が発生することだ。ソウル市は地下の空洞探査を専門とし、「インフラの内科医」を自称するジオ・サーチ(東京都大田区)に試験調査を依頼。代表取締役社長の冨田洋氏が語る。
 
「昨年12月にソウルの道路約60キロメートルを調査し、41か所の空洞が見つかった。放置すれば今回のような事故が頻発することになります」
 
 実は空洞発生は地下構造物の老朽化が進む各国が抱える共通の課題であり、「世界の大都市で陥没が多発している」(同前)というが、ソウルでは対策の前提となる空洞調査がより困難になる事情もある。大手ゼネコン関係者が指摘する。
 
「韓国での工事を請け負うと往生するのが、行政が地下の状況の情報管理をいい加減にしていること。ボーリング調査をしようと思ったら、あるはずのない太い給水管やガス管が通っていることがよくある。加えて手抜き工事もある。今回の事故も、すぐ隣のマンション建設現場で地下工事をした際の埋め戻しが杜撰だったとみられている」
 
 振り返れば日本も1988年、東京・銀座で道路陥没が起き、その後の2週間で同様の事故が12件続いたことがある。それをきっかけに本格的な対策に乗り出し、現在の世界に類を見ない安全を築き上げた。

※週刊ポスト2015年3月20日号

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