スポーツ

杉下茂 阪神の「打つが守れぬ中堅手」にわざと安打打たせた

 日本球界初のフォークボーラーとして知られる杉下茂氏は、中日のエースとして川上哲治氏とは選手として対戦した。現役を退くと、1966年に阪神、1968年に中日の監督として巨人V9を率いた川上氏のライバルとなった。9年連続日本一を成し遂げた巨人軍の強さと、現役時代の投球術について杉下氏が語った。

 * * *
 V9の原動力として、巨人が「ドジャース戦法」を採り入れたことがよく指摘されますが、これも僕はON(王貞治・長嶋茂雄)がいたからこそできた野球だと思っています。

 ドジャース戦法とはすなわち「守りの野球」。サンディ・コーファックス(通算165勝、サイ・ヤング賞3回)とドン・ドライスデール(通算209勝、サイ・ヤング賞1回)という、左右のエースがいた時代にドジャースがやっていた野球です。

 V9巨人も同じく守りの野球だった。そして守ってさえいればONが必ず点を取ってくれた。それにONが点を取ることは、他球団の戦略までも動かした。他のチームは投手はどうせONに打たれるから、せめて打撃戦にしようと、守れなくても攻撃を優先して選手を集めていました。でも、それでは完全に巨人ペースです。外野手の間を簡単に抜かれるし、抜かれたら必ず長打になっちゃうわけですからね。

 僕は中日で現役だった頃、阪神の「打つけど守れない」中堅手の選手にわざと1本打たせるということをやっていました。阪神はその選手の調子が良いと思って最後まで使うから、守備に穴ができる。普通のヒットでも外野の間を抜いて長打になり、点が取りやすくなるんです。

 でも、巨人の外野陣はしっかりしていた。高田(繁)、柴田(勲)、国松(彰)や末次(利光)が守る外野は堅く、間を抜く当たりを打つのは至難の業でした。特に高田はフェンスに当たったクッションボールの処理が上手く、三塁線を抜いてもシングルヒットにしかなりませんでした。

※週刊ポスト2015年3月20日号

関連記事

トピックス

報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
雅子さまは免許証の更新を続けられてきたという(5月、栃木県。写真/JMPA)
【天皇ご一家のご静養】雅子さま、30年以上前の外務省時代に購入された愛車「カローラII」に天皇陛下と愛子さまを乗せてドライブ 普段は皇居内で管理
女性セブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
東京駅17番ホームで「Zポーズ」で出発を宣言する“百田車掌”。隣のホームには、「目撃すると幸運が訪れる」という「ドクターイエロー」が停車。1か月に3回だけしか走行しないため、貴重な偶然に百田も大興奮!
「エビ反りジャンプをしてきてよかった」ももクロ・百田夏菜子、東海道新幹線の貸切車両『かっぱえびせん号』特別車掌に任命される
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン