ビジネス

信州大学長の「スマホ談話」 大学教員が現実的に考えてみた

「スマホやめますか、信大やめますか」。信州大学入学式での学長挨拶がネットで話題になった。批判されるようなおかしな内容だろうか。「むしろ素晴らしい」と、作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が語る。

 * * *
 少し前の話ですが、4月4日に行われた信州大学の入学式における山沢清人学長の挨拶が話題になりました。4月5日の「スマホやめるか、大学やめるか」という見出しの朝日新聞の記事がネット上で拡散し、賛否を呼びました。

 4月から千葉商科大学国際教養学部の専任講師に就任し、本格的に大学人としてのキャリアを歩み始めた私に言わせると、このニュース、今の大学、学生、メディアを語る上で絶好の材料です。様々な角度から、徒然なるままに語ることにしましょう。

【入学式がニュースになった件、実はこれがすごい】

 まず、この件で注目すべき点は、そもそも入学式がニュースになったということです。これはすごいことですよ。

 大学は広報機能を強化しており、ポジティブなニュースがメディアに載るよう努力しています。入学式も広報の頑張りどころです。ただ、全国には約780もの大学があるわけで、東大を頂点とした有名大学が全国紙に取り上げられる他は、その地域を代表する大学が地方ブロック紙、地方紙に載るくらいです。ざっくり計算ですが、約95%の大学の入学式はメディアからスルーされます。

 今回、大学の入学式で全国区の話題になったのは、この信州大学と、つんく♂さんが登場し、喉頭がん治療のために声帯除去したことをその席でカミングアウトした近畿大学くらいでしょう。「良い話」をしている学長はたくさんいるのに、ここまで全国にメッセージが届いた例はなかなかありません。

 まず、ニュースになったことを評価すべきだと思います。それくらいメッセージが明確だったということでしょう。

【脊髄反射するネット民 そして全文掲載の価値】

 ネット民は、タイトルだけで脊髄反射する。この件でもその習性が可視化されました。「スマホやめるか、大学やめるか」というタイトルだけがひとり歩きしました。

 この件、朝日新聞のサイトでは、入学式の概要を報じたニュース(今回ネットで拡散したニュース)と、学長のスピーチ全文を両方掲載したのですね。概要の本文を読むだけでもだいぶ印象は変わります。

 山沢学長は、昨今の若者世代がスマートフォン偏重や依存症になっている風潮を憂慮。「スイッチを切って本を読み、友だちと話し、自分で考える習慣をつけ、物事を根本から考えて全力で行動することが独創性豊かな学生を育てる」と語りかけた。
(朝日新聞デジタル 2015年4月5日17時03分掲載記事より抜粋)

 スマホをやめるか、大学をやめるかと極端に迫っているわけではありません。全文を読むとさらに印象は変わります。ICTの活用などについてもふれており、スマホを否定しているわけではありません。

 朝日新聞の見出しを「ミスリードだ」と批判する声も見受けられました。たしかに、やや誇大かなとも思います。ただ見出しというものは、内容をわかりやすく、読みたくなるようにまとめるものです。そもそもそう割り切って読むべきではないでしょうか。

 最近良く見かける「全文掲載」ですが、これは様々な誤解を解消する効果があります。元のソースを読んで判断するというのは大事な姿勢だと思いました。すべてはそうできませんが。

 この記事自体が、大学生のメディア・リテラシーの良い教科書だと感じた次第です。

関連キーワード

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン